研究課題/領域番号 |
20K05035
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
小林 健治 摂南大学, 理工学部, 准教授 (50736676)
|
研究分担者 |
木多 彩子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90330357)
池内 淳子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90450254)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 保健所 / 日常 / 災害 / シームレス / 計画指標 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、保健所の日常を把握するために近畿圏に現存する保健所に勤務経験のある職員に対して、保健所内の諸室の使い方や来訪者の様子などに関するヒアリング調査を行った。その結果、[業務]部門では、保健所の集約による一保健所あたりの職員数増加に伴い、多くの保健所で事務室が拡張されているものの、なお手狭であること、[診療]部門では、診察室、レントゲン室などは常時使用しておらず、各保健所で定めた日時、来所者からの予約申込時にのみ使用していること、[指導]部門では、講堂は保健師などを集めたセミナー、研修などでの使用のほか、多人数が申請に訪れる際の臨時受付窓口としても使用されていること。[検査]部門では、保健所の集約とともに検査体制自体も統合されたため、かつて検査室だった部屋が事務室や会議室、倉庫などに変更されていること、などが明らかとなり、築年数が経過した保健所を中心に、法改正、集約・統合に伴う制度や役割の変化に対する適応が十分と言えず、建物としての更新検討 時期が迫っているよう様子を明らかにした。 さらに、令和2年度に得た基礎資料と併せて、「日常と災害時をシームレスにつなぐ保健所」の計画条件を仮設定し、建築設計事務所3社に提示し、建築設計の専門性に基づいた技術提案を実施した。実施結果から、災害時にのみ増大する人員・物資・活動と日常をシームレスにつなぐ保健所には、1. 大規模になり得るスペースの活用、2. 専門機器を備えていないスペースの活用、 3. 外壁に面するスペースの活用、4. 屋外も含めたグランドレベルの活用、5. 庇や軒下といった半屋外スペースの活用、といった5つの知見を示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、研究計画書に記載していた保健所へ訪問しての観察調査やヒアリングを行うことが出来なかったものの、職員へのヒアリング調査でそれを補うことができた。それまでの成果を計画条件としてまとめ、実務家による技術提案を研究計画書に記載の年度に実施することができた。令和4年度にはその技術提案結果をもとに、公衆衛生の専門家や職員の方々へアプローチする目処もたっており、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は研究の3年目であり、これまでの研究成果をもとに仕上げに入るフェーズである。研究で実施できた調査範囲は近畿圏といういわゆる都市部に限られてはいるものの、保健所が抱える課題や日常と災害時をシームレスにつなぐ保健所の基礎提案資料はすでに整いつつあるので、その成果に対してより精度を高めるために、公衆衛生の専門家らにアプローチすることで、実践的な建築の提案へと繋げていきたい。図らずも新型コロナウイルス感染症により保健所は注目を集めているので、当初の研究目的だけではなく、より社会に役立つ研究成果を提示できると確信している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
公衆衛生の専門家らへのアプローチするタイミングを令和4年度(次年度)に設定したため。
|