2022年度はこれまでに構築したスタック危険率予測モデルに凍結防止剤の影響を考慮した。本モデルは気象、交通、道路管理作業を入力することで、路面温度、路面雪氷状態、路面上の凍結防止剤の質量、塩濃度、スタック危険率を出力できる。 スタック危険率予測モデルの妥当性を検証するために、2023年1月に富山県内の道路で現地観測を実施し、降雪が続いた1月22日から30日までを対象にモデルを検証した。当該期間において、立ち往生は発生しなかったため、検証は路面雪氷状態について行った。 野外観測から、除雪車が通過後の圧雪厚さが水分を含むような軟らかい圧雪であればほぼ0になるが、水分が再凍結して路面に固着しているような圧雪であれば除雪車通過しても殆ど変わらない場合があることが分かった。そのため、解析において除雪車通過後の圧雪厚さの与え方によって、路面雪氷状態の計算精度が大きく左右された。解析において除雪通過後の圧雪厚さを測定結果を基に与えることによって、路面雪氷状態の計算結果は測定結果と概ね一致した。 車両滞留イベントデータベースを用いたスタック発生条件の分析を行った結果、車両滞留の発生時刻には日中に発生件数が多い一方で、未明から早朝にかけての時間帯は少ないという日内変動の特徴が認められた。これには、除雪作業終了以降の時間経過に伴う厚い圧雪の形成が関係していると推測され、本研究で解明・開発したスタック車両の発生メカニズムやスタック危険率モデルの妥当性を間接的に示すものである。 スタック発生メカニズムは本研究で得られた新しい知見である。また、除雪、凍結防止剤の人為要因に加えてスタック危険率を組み込んだスタック危険率モデルは世界的にも新規性が高い。今後は、実車試験や野外観測を継続し、スタックに関する知見を深めるとともに、モデルの検証や改良を行い、実道路でスタック危険率予測モデルの適用を目指す。
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