研究課題/領域番号 |
20K05044
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩田 知孝 京都大学, 防災研究所, 教授 (80211762)
|
研究分担者 |
染井 一寛 一般財団法人地域地盤環境研究所, その他部局等, 研究員 (40750584)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | スペクトルインバージョン / 震源特性 / サイト増幅特性 / 伝播経路特性 / 地盤構造モデル / 破壊伝播効果 / 応力降下量 / ω2乗モデル |
研究実績の概要 |
強震記録を用いた震源特性,地震波伝播経路特性,サイト増幅特性を分離するスペクトル・インバージョン法の改良を進めている.本手法のオリジナルの方法では,多数のイベントと多数の観測点の組み合わせによって安定した解を求めることができる一方,震源特性及びサイト増幅特性はそれぞれのイベント,観測地点で1つ,伝播経路特性としてのみかけの減衰は対象領域で一定と仮定している. 本研究では,震源の破壊伝播効果による震源特性の方位依存性や,伝播経路の3次元的な不均質,地下地盤の2,3次元不規則構造に起因する地震波入射方向によるサイト増幅特性の違いなどが安定に抽出できるかどうかを確認した上で分離する方法に改良することで,スペクトル・インバージョンで得られる震源特性、伝播経路特性、サイト増幅特性の情報の高度化を行うことを目的としている.得られた各特性は,従来法で評価されてきた応力降下量の地震規模依存性評価やサイト増幅特性の地盤構造モデル評価をより高精度に進められるようにしていくことを目標としている. 今年度は観測点カバレジのよい2016年熊本地震の余震のデータセットを用いて,震源特性に含まれる破壊伝播効果を抽出ができるかどうかを試した.破壊伝播効果を,単純な線震源モデル仮定ではあるものの,物理的に意味のあるパラメータとして観測方程式に新たに組み込んだ定式を提案した.多くのイベントで,破壊伝播についての情報を得ることができた.それによって得られた破壊伝播効果の1例は,経験的グリーン関数法による強震動シミュレーションに基づく震源断層の破壊様式と合致しており,定式化の有効性が示されたと考えている. このようにして破壊伝播効果を評価した後の震源特性(震源スペクトル)によって今後応力降下量などの震源パラメータの推定とその安定性について議論を進める.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スペクトルインバージョン式に断層破壊の伝播効果を考慮した定式化を実施することができ,実データセットに適用してその有効性が確かめられたことから,初年度に目標としていた研究進捗は順調に進められていると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
新しい定式の有効性については,現状のところは,1イベントに対しての他のアプローチによる震源断層の破壊伝播評価との一致,という点だけであることから,有効性に関しては様々な方法,例えばモデル数値実験による確認等を行う必要があると考えている.また,破壊伝播効果を取り除いた震源特性が,本研究の狙いである,コーナー周波数評価の安定,あるいは応力降下量の安定した評価にどのように寄与できているのかということを今後調べていく必要がある.これを行うことにより,従来のスペクトルインバージョンや,経験的グリーン関数法による伝播経路特性の剥ぎ取り後に行われている,平均的な震源スペクトルを用いた応力降下量評価の問題点の指摘につなげていきたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で,研究発表や資料収集のための旅費等の出費がなかった.令和3年度もしばらくこのような状況が継続すると考えられるため,研究成果発表等についての方法を工夫するとともに,論文発表等へ支出を検討したい.
|