研究課題/領域番号 |
20K05047
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
前野 詩朗 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特任教授 (20157150)
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研究分担者 |
赤穂 良輔 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90599333)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水防災 / 堤防決壊 / 被害予測 / 内外水位差 / 避難経路 |
研究実績の概要 |
本研究では,中小河川で流量・水位データが殆ど無い河川に対する,ローカルな地形条件などを考慮できる精度良い被災予測モデルを構築することで,今後の被災防止に向けて河道の弱点箇所の抽出手法を確立し,さらに,避難路が浸水して避難出来なかったなどの事例もあったため,事前に,安全な避難経路を提示するシステムを構築することを目的として実施した. 最初の課題に対して,具体的には,まず,平成30年7月豪雨時に,高梁川の右支川小田川と3つの支川で発生した洪水を再現出来るモデルを構築した.次に,簡易に堤防の弱点箇所を抽出するための手法の構築した.堤防決壊の要因を二つのグループに分けて,洪水の流況と堤防の形状に関わる要因に分けた.そして,流況に関わる要因として,決壊箇所周辺の流速分布状況,越水の有無,外水位の時間変化,内水位の時間変化を検討した.また,堤防形状に係る要因として,堤防の天端幅,裏法こう配,堤防天端高,堤外地地盤高の状況を決壊箇所毎に検討した.さらに,決壊箇所周辺の樋門や堤外水路などの付帯構造物の影響も合わせて検討した.その結果,流況に関わる要因から,越流の有無と内外水位差が決壊に及ぼす影響が大きいことが分かった. つぎに,平成30年7月豪雨時の降雨量データを用いて,小田川とその支川の末政川,高馬川に囲まれた地域を対象として,浸水ハザードマップに記載されている避難箇所とした場合と,さらに浸水による避難路の浸水を考慮して避難場所を追加した場合の避難時間を検討した.その結果,避難所を追加することで避難時間を軽減できる住家がかなり増えること,また,安全に避難するための避難経路予測を実施した結果,避難開始時刻は,矢掛水位観測所で避難勧告が発出された時刻で避難を開始する必要があったことが示された. さらに,山地河川で決壊被害軽減のための遊水地の水理機能を検討し,その有効性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度を終えた段階である.決壊箇所の予測については,ALB測量データを用いたモデルを 再構築し検討している.解析結果を用いて決壊の有無の基準を検討した結果,越流の有無,内外水位差,堤防形状を要因としてある程度決壊を予測出来た. 浸水と避難時間を検討するモデルを構築し,現地に適用した. 以上の成果を考慮して,本研究は,概ね順調に進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
堤防決壊の予測モデルをある程度構築できたので,次年度は真備町以外で実際に決壊が生じた旭川水系の砂川や令和2年7月に生じた球磨川水害で決壊した箇所に予測モデルを適用してモデルの検証を行う. 越流による決壊予測を実施する際に,200m間隔の定期横断測量結果を用いる場合と,20m,40m,100m間隔のGPS測量データを用いる場合,ALBデータを用いる場合を比較して,今度,堤防の弱点箇所抽出のためにどのようなデータを準備する必要があるかを検討する. 避難に関して,内水位だけでなく外水位の影響も加えて検討する.解析結果を地元住民と共有することで住民の迅速な避難への意識の向上を図る. 得られた成果を論文として内外へ発信する.
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