本研究は、災害時における電柱等のインフラ被害状況の把握に対する「IoTセンサ」および「光ファイバの伝送特性」を利用した技術のフィジビリティスタディを目的としている。これに対して、令和4年度は次の2つの課題に取り組む計画を立てた。課題1)IoT センサを利用した技術については、加速度センサ/ピエゾセンサを用いたIoTセンサの試作/実証試験および数値シミュレーションを行った。平時における交通量調査機能として、車両通過検知に対する実証実験では、良好な車両判定精度が得られることを確認した。しかし、車両と歩行者の識別に問題があった。電柱の倒壊については、4つのピエゾセンサを組み合わせたIoTセンサデバイスを試作/実証試験を行い、傾斜角検出特性がデバイスの向きに依存することが明らかになった。課題2)光ファイバセンサを応用した技術については、光ファイバの変形に対する伝搬光の感度が高いと考えられるマルチモード光ファイバをベースとしたセンサシステムを想定し、そのために必要となる光デバイス(光合分配器)の数値シミュレーションを行い、設計のための分析を行った。また、マルチモード光ファイバ中の複雑な光伝搬の振る舞いを数値シミュレーションにより明らかにした。これにより、光ファイバへの入射条件に伝搬光の振る舞いが大きく依存することが明らかになった。さらに、電柱倒壊による断線時のバースト信号を利用するために、光ファイバ間に空隙を設けた光伝搬シミュレーションを行って、断線による伝搬光の振る舞いを明らかにした。 本研究では、IoT センサデバイスの試作および実証実験を行い、災害時の電柱倒壊方向の検知システム実現の可能性を実証した。また、マルチモード光ファイバを用いた検知システム実現に必要な光ファイバ伝搬中および光合分配器中の伝搬光の複雑な振る舞いを数値シミュレーションにより明らかにした。
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