研究課題/領域番号 |
20K05057
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
篠田 昌弘 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (30462930)
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研究分担者 |
宮田 喜壽 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (20532790)
野々山 栄人 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 講師 (00624842)
吉田 郁政 東京都市大学, 理工学部, 教授 (60409373)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 斜面 / リスク / 振動エネルギー / 可視化 / ハザード評価 / フラジリティ評価 |
研究実績の概要 |
近年、地震発生リスクやそれに伴う斜面災害リスクが増加している。不確定性の高い自然外力や地盤強度を考慮する場合には、決定論的ではなく確率論的に議論することが合理的である。本研究では地震による振動エネルギーに着目して、振動エネルギーの発生頻度と発生規模を考慮した斜面災害リスク評価法の提案と斜面災害リスクマップによる可視化を目的とする。 斜面災害リスク評価法を提案するため、①振動エネルギーに応じた地盤材料の変形強度特性を把握する。次に、②現実に即した斜面模型を用いて、振動エネルギーを指標とした振動台による加振実験を実施して、斜面崩壊メカニズムを解明する。さらに、加振実験結果より、斜面のエネルギーモデルを構築する。最後に、③構築した斜面のエネルギーモデルを用いて、振動エネルギー発生頻度と発生規模を考慮した斜面の損傷頻度評価を確率論的手法により実施して、斜面災害リスクマップを作成する。公開された斜面の災害状況図を用いて提案法の妥当性を検証する。 我が国の地方自治体では、斜面崩壊に関する危険度を土砂災害ハザードマップで示しているものの、斜面勾配を主要なパラメータとしており、地震等の特定の作用を誘因とした広域的な斜面災害リスクは公表されていない。そのため、本研究で最終的に得られる広域的な斜面災害リスクマップは、斜面災害リスクの低減に寄与できる。 令和2年度には、計画通り、地盤材料の変形強度特性を把握して、振動台実験で使用する斜面模型の形状等を安定解析を実施して決定した。また、試行的に振動エネルギーを指標とした斜面の振動台実験を事前に3ケース実施して、令和3年度に実施予定の振動台実験をスムーズに実施できるように実験方法の確立に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施実施計画では、令和2年度に「振動エネルギーに応じた地盤材料の変形強度特性の把握」を実施して、令和3年度に「斜面崩壊メカニズムの解明と斜面エネルギーモデルの構築の実施」を計画していた。令和2年度には、計画通り、不飽和状態の混合試料(砂+ベントナイト)と北海道胆振東部地震における斜面崩壊地から採取した地盤試料の変形強度特性を把握した。把握した強度特性を用いて、振動台実験で使用する斜面模型の形状等を安定解析を実施して決定した。また、試行的に振動エネルギーを指標とした斜面の振動台実験を事前に3ケース実施して、令和3年度に実施予定の振動台実験をスムーズに実施できるように実験方法の確立に努めた。振動台実験において、加振中の斜面地盤のせん断ひずみを計測するため、地盤内に標点を設置してPTV解析が可能かどうか検討した。検討の結果、PIV解析よりもPTV解析を実施することで、斜面地盤のせん断ひずみを精度良く計測できることが判明したため、令和3年度の斜面の振動台実験では、加振中の斜面地盤のせん断ひずみの計測にPTV解析を実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、斜面崩壊メカニズムの解明と斜面エネルギーモデルの構築を実施する。斜面崩壊メカニズム解明の第一段階として、水平・鉛直同時加振が可能な振動台を用いて振動エネルギーを変化させた加振実験を実施する。斜面模型は、不飽和状態の岩盤層、弱層(珪砂とベントナイト混合試料)、表層(鉄粉とベントナイト混合試料)の地層構成として、斜面勾配は30度、35度、40度、45度の4種類とする。弱層内に標点を設けてPTV解析を実施する。これにより、地盤のせん断ひずみを高速に計測することが可能となる。振動エネルギー・斜面勾配・地盤強度と斜面変形量の関係を把握した後、崩壊メカニズムを解明し、崩壊の発生と崩壊量を表現できるエネルギーモデルを構築する。斜面崩壊メカニズム解明の第二段階として北海道胆振東部地震で斜面崩壊地から採取した試料を用いて加振実験を実施する。加振波には、K-NET(HKD126 鵡川)等の観測記録を用いる。加振実験後、各種解析法(非円弧すべり安定・変形解析、有限要素法)を用いて検証解析を実施して、加振実験結果の分析を行う。令和3年4月において、北海道胆振東部地方で斜面崩壊土砂と同様な地盤材料(樽前d層と恵庭a層)を採取しており、斜面模型構築を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度には旅費270,000円を計上していたが、コロナ禍で出張が出来なかった。そのため、ほぼ同額の266,297円の残額を生じた。次年度使用額の使用計画として、北海道胆振東部地方に渡航して、北海道胆振東部地震により崩壊した斜面の現地調査と現地試料採取を実施する予定である。
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