研究課題/領域番号 |
20K05069
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
譯田 真人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (00550203)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Ti / 構造相変態 / 分子動力学法 / 原子間相互作用 |
研究実績の概要 |
本課題では、チタン(Ti)の構造相変態を解析する原子シミュレーション手法として、有限温度における原子個々の運動を直接扱うことができる分子動力学法を用いる。まずTiの構造相変態を対象とした原子間相互作用ポテンシャル(原子間に作用する力とポテンシャルエネルギーを評価するモデル)について、第一原理計算で求めた多数の構造とポテンシャルエネルギーの関係性から多体間型のポテンシャル関数などのパラメーター探索を実施した。また有限温度の分子動力学計算を実施し、結晶構造中に存在する別の相(別の結晶構造)が成長、消滅する過程について、設定温度や相のサイズの影響を評価した。さらには固体結晶状態からの加熱、あるいは液体状態から冷却過程においてどのような相変態挙動が見られるかを系統的に調査した。また複数の結晶構造からなる多結晶構造モデルを作成し、昇温・冷却プロセス、また変形挙動解析を実施することで、Tiの構造相変態に対する初期原子構造、材料欠陥、温度、および応力などの影響を系統的に解析した。さらには別の合金についても、多結晶構造原子モデルを作成し、有限温度での分子動力学計算による単軸引張・圧縮の変形解析から構造相変態挙動を調べた。これらの系統的な調査から、分子動力学計算で対象とできる時間・空間スケール内で発生するTiの構造相変態について、基礎的なふるまいの理解を実施した。本研究で得られた成果の一部は国内学会の研究会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tiの構造相変態を扱う原子間相互作用モデルについて、複数のポテンシャルタイプを想定したパラメータ探索を実施した。またTiの構造相変態を解析するために、単結晶モデル、多結晶モデル、また複数の相が同時に存在する初期構造モデルを作成し、そのうえで加熱、冷却、有限温度変形解析などの系統的な調査から、分子動力学計算で対象とする時間・空間スケール内で発生する構造相変態の基礎的なふるまいを獲得できた。このことから(2)おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に獲得した、分子動力学計算で対象とする時間・空間スケール内で発生する構造相変態のふるまいに関する基礎的理解をもとに、解析する対象をしぼり、Tiの構造相変態に対する詳細な原子論解析を実施する。まず原子間相互作用モデルについて高精度化に向けた要点を整理し、相変態解析を対象としたポテンシャルのパラメータ探索を実施する。そのうえで作成したポテンシャルの精度を検証する。さらにはTiの構造相変態について、初期構造や初期に導入する材料欠陥などの条件と対象を絞ったうえで、構造相変態過程に対する初期構造や材料欠陥、温度や応力状態の影響を理解するための原子論解析を実施し、新たな知見の獲得を目指す。2021年度は特に初期原子構造に材料欠陥を導入した原子モデルを用いて、構造相変態に対する初期材料欠陥の影響に注目して研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に想定していた国内出張と国外出張を取りやめたため次年度使用額が生じた。2021年度の使用計画として、金属材料組織などに関する書籍購入費、計算機端末購入費、英文校正費などに使用することを予定している。
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