本課題ではTi構造相変態の初期機構解明に向けた原子論的解析を実施した。まずTiの構造相変態における原子スケールの力とエネルギーを適切に表現するために、高精度な電子論計算である第一原理計算データに基づき、多体型および機械学習タイプの原子間相互作用モデルの作成に取り組んだ。さらには有限温度における多数の原子ダイナミクスを直接扱うことができる分子動力学シミュレーションを用いて、液体状態からの結晶相形成過程の一般的な描像の獲得、および異なる固相間の相変態過程の原子スケール調査を実施した。また相変態に対する他元素、温度や応力、格子欠陥などの影響についても原子スケールから評価を実施した。最終年度には構造相変態の重要な因子である各結晶相のエネルギー的安定性を評価するため、有限温度・圧力下での自由エネルギー評価手法についても原子論的解析に取り組んだ。このように本課題ではTi構造相変態の初期機構解明において基盤となる力場、エネルギー評価手法、原子スケール解析について種々の原子論計算を実施し、初期機構解明の基盤となる原子スケールの知見および計算手法に関する知見を得た。本課題で取り組んだ原子間相互作用モデル、相安定性のエネルギー的評価、相変態の原子スケール調査などの種々の原子論的アプローチは、Tiのみならず構造相変態が重要となる他の材料・現象においても適用できると考えており、このことから本課題で実施した解析は明確な意義と重要性をもつ。
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