研究課題
前年度に作成した機械学習モデルをもとに、物質探索を行った。モデルの解析を行い、作成したモデルがどのような仕組みで目的の物性値に対する組成依存性を表現しているかを議論し、国際学会での招待講演にて発表した。同内容は論文にまとめている段階である。また、予め見当をつけた母物質の部分置換効果を進めた。磁気冷凍材料の特性を表す物理量である磁気エントロピー変化量において、一部試料で改善を見出しており、部分置換における物性値の変化について計算との対応をまとめている段階である。探索そのものと並行し、探索過程に不可欠である、(1)合成物質の評価測定における適切な測定条件を与えるツール開発と、(2)合成目的物質の合否判定・不純物相特定ツール開発を行った。前者は予備データをニューラルネットワークを用いて学習することで、本測定結果の測定条件依存性を予測するもので特に測定結果から微積分などの演算を通して物理量を算出する場合に有効で、論文作成を進めている。後者は合成物質のX線回折パターンと、候補物質の結晶構造オープンデータベースとの対応を高速計算するもので、論文にて発表を行った。これら(1)(2)の過程を効率的に進めることができるか否かは、従来研究者その人に大きく依存し、従って個々人の勘コツ経験とは異なる見地から行うデータ駆動型物質探索においてボトルネックとなりうるものであった。その解決に結晶データベースの利用と機械学習を用いるこれらの手法開発は、より一層のデータ駆動型物質探索を推進する可能性を示すと考えている。
2: おおむね順調に進展している
物質探索の結果自身は、現在結果をまとめ論文化を進めている段階である。一方で、探索過程の手法開発において、当初予期していなかった追加の進展が2つあった。探索には、(1)候補材料の選定、(2)材料の合成、(3)材料の評価の3つの段階があり、本課題で提案していたのは(1)の手法に当たる。しかし実際に研究を行うことで、(2)、(3)の手法開発も必要であることが明らかとなった。このうち(2)については、合成した材料が目的物質であるか、目的物質以外にどのような不純物が含まれるかを把握することが重要である。そこで、オープンデータベースから、あり得る元素の組み合わせをもつ結晶構造を網羅的に取得し、試料のX線回折パターンと照合して主相・不純物相を特定する手法開発を行った。このソフトウェアは、論文発表を行い、githubにて公開している。また(3)については、ニューラルネットワークを用いて予備データから適切な本測定条件を予測するソフトウェア開発を行い、論文作成中である。この手法は、本測定直前の予備測定に適用できるだけでなく、他の目的で過去に測定された測定結果を、別の視点で解析することにも有用である。すなわち、世界中で普及・整備が進んでいる、各測定データrepositoryの有効活用を可能とする。
探索結果をとりまとめ、論文化を進める。また、前年度に開発した材料合成合否判定および、評価の適切な測定条件を与えるツールを用い、材料探索を進める。これらのツールは、本課題のターゲットである磁気冷凍材料だけでなく、物質探索全般に対し有用であると考えており、普及のための発表活動など周知を進める。
コロナ渦の影響を受け、年末に購入予定であった合成制御に用いる半導体製品が、年度内に納品できない見込みとなった。また年度末に納品の見込みであった希土類原材料(消耗品)もウクライナ情勢の変化の影響か、中国からの輸入が遅れる見込みとなった。このため、これらの購入は翌年度に見送ることとなった。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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