粉末開発において“組成”、“結晶構造”、“粒子径”、“粒子表面構造”、“粒子形状”をそれぞれ目的のものに制御することで高機能な粉末が実現されている。しかしながら、希土類合金粉末においては湿式合成技術が存在しなかったことから“粒子形状の制御”は実現されていなかった。申請者は、溶融塩中で希土類-遷移金属粒子を合成する方法を新たに開発し、針状の希土類-遷移金属合金粒子を作製することに成功している。一方で、針状粒子は数百個粒子中に1個程度であったため、針状粒子の生成メカニズムを特定し、針状粒子を選択的に合成することを目的に本研究を行っている。 遷移金属合金粒子合成において、加熱下で金属塩を加える、あるいは還元剤を加えることで反応条件のコントロールを行う方法がある。本年度は溶融塩中還元拡散法による希土類合金粒子生成においても加熱下で原料粉末や還元剤が投入可能な熱処理炉の開発を行った。グローブボックスを接続した縦型熱処理炉の内蓋を新たに設計し、加熱下において粉末投入が可能な炉を製作した。Fe塩化物+カルシウム+溶融塩にSm塩化物を加える方法や、Sm塩化物+カルシウム+溶融塩にFe塩化物を加える方法など、加熱下で投入する原料を変えて、その影響を調査した。結果、Fe塩化物を加熱下で加える方法において、他よりも若干針状粒子の存在率が向上している傾向が確認された。あらかじめSmを還元することでSm-Ca-溶融塩とすることが影響していると考えられる。しかしながら、それでも針状粒子の個数自体は1%にも達していないため、より多くの針状粒子が合成できる方法の開発が必要である。
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