研究課題/領域番号 |
20K05072
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岡田 周祐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90712480)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 希土類ー遷移金属合金 / 還元拡散 / 溶融塩 |
研究実績の概要 |
粉末開発において“組成”、“結晶構造”、“粒子径”、“粒子表面構造”、“粒子形状”をそれぞれ目的のものに制御することで高機能な粉末が実現されている。しかしながら、希土類合金粉末においては湿式合成技術が存在しなかったことから“粒子形状の制御”は実現されていなかった。申請者は、溶融塩中で希土類-遷移金属粒子を合成する方法を新たに開発し、ロッド状の希土類-遷移金属合金粒子を作製することに成功している。一方で、ロッド状粒子は数百個粒子中に1個程度であったため、ロッド状粒子の生成メカニズムを特定し、ロッド状粒子を選択的に合成することを目的に本研究を行っている。 今年度は原料となる鉄塩、サマリウム塩、還元剤であるカルシウム、溶融塩としてのLiClの混合比率とロッド状粒子生成との相関を検討した。結果、それぞれをある範囲の比率で混合したところ、XRD分析よりSm2Fe14相と思われる結晶相が生成し、その際にロッド状の粒子が多くみられることを見出した。Sm2Fe14B相は安定相であり、容易に合成することが可能であるが、本研究において、ボロンは一切添加していないにも関わらず合成された粉末のX線回折パターンはSm2Fe14B相に一致していることからSm2Fe14相として生成していることが考えられる。Sm2Fe14相は通常の冶金プロセスにおいて生成の報告はないが、唯一、Flux法においてSm2Fe14相の単結晶粒子の合成が報告されている。本検討条件においては液中での粒子合成であるとことがFlux法と共通しているところであり、同様の粒子生成・成長が起こっている可能性がある。Flux法での報告をヒントに合成熱処理条件を検討したところ、ゆっくりと昇温することでTbCu7型Sm-Fe球状粒子の生成抑制され、Sm2Fe14相を選択的に合成できることをがわかった。結果、ロッド状粒子の生成比率を大幅に改善することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロッド状形状がSm2Fe14相と考えられる結晶相に起因していることを新たに見出した。また合成条件を検討した結果、SmFe3相やTbCu7型Sm-Fe、Sm2Fe17相などの異相が生成することなく、Sm2Fe14相を選択的に合成する条件を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
現状、Sm2Fe14相粒子においてアスペクト比は制御できておらず、ロッド状の粒子から角柱状のものまで様々な形状となっている。アスペクト比に影響する要素の検討をおこなう。また現状Sm2Fe14相のロッド状粒子のみ合成可能であるが、Sm2Fe14相は異方性磁界は高いものの面内異方性であることが知られており、現状、魅力的な応用先はない。Sm2Fe17相を窒化したSm2Fe17N3は永久磁石として高いポテンシャルを有していることから、Sm2Fe17相のロッド粒子を合成する方法の検討を行う。
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