粉末開発において“組成”、“結晶構造”、“粒子径”、“粒子表面構造”、“粒子形状”をそれぞれ目的のものに制御することで高機能な粉末が実現されている。しかしながら、希土類合金粉末においては湿式合成技術が存在しなかったことから“粒子形状の制御”は実現されていなかった。申請者は、溶融塩中で希土類-遷移金属粒子を合成する方法を新たに開発し、ロッド状の希土類-遷移金属合金粒子を作製することに成功している。一方で、ロッド状粒子は数百個粒子中に1個程度であったため、ロッド状粒子の生成メカニズムを特定し、ロッド状粒子を選択的に合成することを目的に本研究を行っている。 昨年度までの研究によりロッド形状の粒子の合成率を向上させることが可能となり、ロッド形状粒子の結晶相としてはSm2Fe14相と思われる結晶相であることを明らかにした。本年は残留Fe相を低減するため、特に反応温度の高温化を検討した。結果、鉄相は低減されたものの、800℃程度の熱処理では結晶相が安定相であるTh2Zn17型Sm-Feに変化し、かつロッド状のSm-Fe粒子は確認できなかった。このほか、750℃で一定時間保持しロッド状Sm2Fe14粒子を形成させた後、昇温することでロッド状Th2Zn17型Sm-Fe粒子の合成なども検討したが、ロッド状の粒子は確認できなかった。本研究により、ロッド形状粒子の生成には、過剰なCaの存在、溶融塩、ゆっくりとした昇温速度に加え、~750℃程度までの低い反応温度で結晶相がSm2Fe14と思われる相であることが条件だとわかった。
|