研究課題/領域番号 |
20K05073
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
藤井 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20597645)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 圧電体 / 強誘電体 / 単結晶 |
研究実績の概要 |
Pb(Zr,Ti)O3 (PZT)は圧電素子として電子デバイスに用いられている。しかしながら有毒な鉛を含むため将来RoHS指令等で使用が制限される可能性がある。(K0.5Na0.5)NbO3とその固溶体は代替候補材料の1つである。PZTに比べて圧電特性が小さいので向上させる必要がある。圧電単結晶では結晶異方性の利用し、ドメインを微細化することで圧電特性が向上することが知られている。しかしながら(K0.5Na0.5)NbO3は分解溶融するため一般的な溶融法や溶液法で組成の均一な単結晶を得ることは難しい。そこで本研究では溶かさずに単結晶を作製する固相結晶成長法に着目した。我々はこれまでにこの方法で(K0.5Na0.5)NbO3単結晶を作製している。 本年度は(K0.5Na0.5)NbO3にLiを固溶させた[Li0.06(K0.5Na0.5)0.94]NbO3単結晶の作製を行った。この組成は正方晶と斜方晶の相変態点が室温付近に移動するため圧電特性が向上する。酸化物粉末に種結晶を埋め込んだ成形体を電気炉で焼結した。種結晶には熱膨張率と格子定数の近いKTaO3を選び、(110)面が表面のものを使用した。焼結温度、焼結助剤の添加量を調整することで[Li0.06(K0.5Na0.5)0.94]NbO3単結晶を作製することができた。得られた単結晶を種結晶から分離して単結晶の方位をX線回折法で調査した結果、種結晶の結晶方位を引き継いで成長しており、立方晶表記で<110>配向していることがわかった。誘電率の温度依存性を評価した。その結果、斜方晶と正方晶の相変態点は室温以下にあり、正方晶と立方晶の相変態点は455℃にあることがわかった。分極曲線(P-Eループ)と歪曲線(S-Eカーブ)を測定したところ、強誘電性のヒステリシスを持つP-EループとS-Eカーブを測定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、固相結晶成長法で[Li0.06(K0.5Na0.5)0.94]NbO3単結晶を作製することができた(組成は仕込み組成)。また、単結晶の物性を評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
[Li0.06(K0.5Na0.5)0.94]NbO3単結晶について、作製条件を変化させて、圧電性が向上する条件を探索する。その結果の学会発表を行う。また、当初の研究計画に従い、別の組成の(K,Na)NbO3系単結晶の作製を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していた国内学会、国際学会の出張がキャンセルとなったため。種結晶の購入等、消耗品の購入に当てたい。
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