研究実績の概要 |
最終年度は0.92[Li0.06(K0.5Na0.5)0.94]NbO3-0.07BaZrO3-0.01(Bi0.5Na0.5)TiO3(LKNN-BZ-BNT)単結晶の圧電特性を向上させるため、まず、単結晶が種結晶から試料表面まで成長する最低の焼結温度を探索した。KTaO3種結晶を埋め込み、焼結助剤Co3O4粉末を0.1wt%添加したLKNN-BZ-BNT成形体(直径10 mm、焼結後の厚さは2 mm弱)を昨年度に試した焼結温度の1160℃から20℃ずつ温度を下げて焼結したところ、1040℃までは単結晶が試料表面まで成長したが、1020,1000℃では成長しないことがわかった。次に安定して単結晶が試料表面まで成長する1060℃において、Co3O4の添加量を0, 0.1, 1 wt%と変えて焼結した。その結果、Co3O4の添加量に関わらず単結晶は成長し、圧電定数d33は、Co3O4の添加量が0, 0.1, 1 wt%の場合でそれぞれ149, 269, 405 pC/Nとなることがわかった。昨年度に1160℃で作製した単結晶試料(Co3O4添加量: 1 wt%)のd33は326 pC/Nだったので、焼結温度の低下によりd33が増加することがわかった。 研究期間全体を通して本研究では室温付近に斜方晶と正方晶の相境界を持つ[Li0.06(K0.5Na0.5)0.94]NbO3(LKNN)単結晶と菱面体晶と正方晶の相境界付近の組成を持つLKNN-BZ-BNT単結晶を固相結晶成長法を用いて作製し、非分極軸方向の圧電特性を測定した。LKNN単結晶は圧電特性があまり高くはなかった。これは単結晶中に多数の欠陥双極子が存在したためと考えている。一方、LKNN-BZ-BNT単結晶は上述のように大きな圧電特性を示した。本研究に依って優れた非鉛圧電単結晶材料を開発することができた。
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