環境浄化・資源回収の観点から,選択的にイオンを吸着・分離する材料の必要性が高まっている。サイズ認識効果等の吸着質に対する高い親和性が選択吸着の鍵となる。しかし,選択性の起源や支配因子にかかわる基礎的知見が不十分である。また、無機ナノシートは,無機層状結晶を剥離することにより得られる二次元ナノ結晶であり,10000を超える大きな異方性比と最大10000に達する大きな横方向サイズを特徴とする。無機ナノシートのなかでも,酸化チタンナノシートは半導体性・(光)触媒特性を示し,積層膜として応用できる。本研究では,5配位チタン化合物のK2Ti2O5(KTO)に着目した。この5配位チタン化合物のイオン交換特性を明らかにするとともに,簡便にナノシートを作製できるかどうか検討した。 吸着試験の結果から,アルカリ金属イオンに対する選択性序列はLi+>Na+>Rb+>Cs+となり,負の離液順列に従う選択性を示した。この選択性序列は,イオン交換樹脂等のイオン交換体の選択性序列と真逆であった。キーランドプロットの結果から,イオン交換反応の平衡定数を見積もったところ,Cs+に比べ,Li+交換反応は熱力学的に有利であると示唆された。交換反応の分配係数Kd値はpHに依存せず,KTO結晶は他のアルカリ金属イオンよりもLi+に対して高い選択性を示した。 フラックス育成したKTO結晶から,簡便にナノシートを作製できるか検討した。極性の低い溶媒を用いると,剥離の兆候は観察されなかった。一方,水あるいはアセトンに浸漬すると,分散液はチンダル現象を示した。超音波の照射や遠心分離の操作は,大型ナノシートの作製に有効ではなかったが,120°Cで水熱処理し,上澄み液を回収することで大型ナノシートが得られた。
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