研究課題/領域番号 |
20K05075
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒川 康良 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00588527)
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研究分担者 |
加藤 慎也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10775844)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シリコン / 量子ドット / プラズマ / 太陽電池 / ベイズ最適化 |
研究実績の概要 |
今年度も「シリコン量子ドット発電層の水素化メカニズムの解明」に注力した研究を行った。n型Si基板にプラズマ援用化学気相堆積法と熱処理により、SiOx母材中にシリコン量子ドットを含む単膜を作製した。その後、水素プラズマ処理を水素圧力を変化させて実施した。高精度で膜中の水素分布を評価可能な共鳴核反応分析(RNA)により、高圧下では水素ラジカル濃度が減少したため、シリコン量子ドット単膜に導入される水素濃度が減少することがわかった。 つづいて、シリコン量子ドット積層膜を発電層とした太陽電池デバイスへの応用を目指し、太陽電池性能において重要な指標である光導電率測定を行い、水素プラズマ処理による膜質向上を電気的な側面から確認することを試みた。石英基板上にプラズマ援用化学気相成長法でSiOx:H/SiOy:H薄膜(x<y)を40サイクル積層した。SiOy:H層(バリア層)の厚さは2 nm、SiOx:H(Si-rich層)の厚さtは3,5,7,10 nmとした。製膜後フォーミングガス雰囲気で30分間、900 ℃にて熱処理し、Si-rich層内にシリコン量子ドットを形成した。熱処理後、水素導入のため水素プラズマ処理を行った。水素プラズマ処理条件はベイズ最適化によって得られたものを用いた。水素プラズマ処理後の試料に対し、暗導電率および擬似太陽光照射下の光導電率測定を行い、それぞれの試料の光感度を評価した。各粒径で光感度を確認することができ、t =3 nmでは水素プラズマ処理後の光感度は26倍程度となり、光照射状態にてキャリア生成されていることを確認することができた。一方、t=5,7,10 nmの試料のHPT後の暗・光導電率は、水素プラズマ処理前と比較し、5桁程度の上昇を確認した。要因としては、サーマルドナーの形成やプロセス中における不純物の混入などが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は水素プラズマ処理条件がシリコン量子ドット積層膜への水素導入に与える影響について明らかにすることが目的であった.共鳴核反応分析(RNA)により、水素プラズマ圧力とシリコン量子ドット積層膜中の水素濃度に関する相関を得ることができ、水素プラズマ処理条件が水素導入に与える影響について重要な知見を得ることができた。また、太陽電池デバイスへの応用を目指し、太陽電池性能において重要な指標である光導電率測定を実施し、水素プラズマ処理による光導電率の向上に関する知見を得ることができた。これらの知見を元に、最終年度の目的となる太陽電池作製を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は太陽電池性能において重要な指標である光導電率を目的関数としたベイズ最適化による水素プラズマ処理を実施する。これにより、光導電率が最大となる水素プラズマ処理条件を見出す。この知見を元に,「シリコン量子ドット太陽電池構造の作製」を行う。石英基板上にシリコン量子ドットを発電層とする太陽電池構造を作製する。セルの評価後、変換効率のボトルネックになっている原因を半導体デバイスシミュレーションにより調査し、太陽電池作製にフィードバックをかける。最終的にはシリコン量子ドットを用いた太陽電池のさらなる高効率化を目指す。
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