研究実績の概要 |
本事業で構築したポリマープレカーサー法によるアモルファス多元素系材料の合成手法を用いて、M1SiBN(M1=アルカリ金属)系材料に加えて、遷移金属ナノ粒子を複合・分散させたアモルファス窒化ケイ素およびSiO2複合体を合成し、これらの材料の水素親和性や水素との化学反応性の評価を継続した。その結果、M1SiBNの水素吸蔵量は、M1=Li, Na, Kaのいずれの場合もM1添加量の増加により比表面積は減少傾向し、結果的にM1/Si=0.1-0.2組成で水素吸蔵量は最大となった。そこでソフトテンプレートを用いた多孔質構造制御を検討したところ、比表面積の向上とともに水素吸蔵量が増加することを実験的に確認した。 一方、遷移金属としてNiナノ粒子を複合・分散させたアモルファス窒化ケイ素材料の検討では、Ni/SiO2系と比較して、水素脱離の活性化エネルギーは約20-25 kJ/mol小さいことが分かった。DFT計算によりNiナノ粒子に対するアモルファス窒化ケイ素マトリックスの影響を検討した結果、通常のSiO2マトリックスと比較してNiナノ粒子のアモルファス窒化ケイ素との界面における電子密度が高く吸着水素が脱離しやすいことが示唆され、実験結果と良く整合していた。また、CO2の吸脱着挙動を調べた結果、約400℃まで吸着CO2を保持することが分かり、水素化反応触媒としての応用の可能性が示された。 さらにより広範な材料系を対象に合成と評価検討を進めた結果、アンモニア生成や種々の触媒機能発現が報告されているアンチペロブスカイトナイトライドナノ粒子分散アモルファス窒化ケイ素の合成に成功し、水素雰囲気でのアンモニアのその場生成やCO2吸脱着特性の温度依存性などの特性評価においても興味深い知見が得られた。 以上の本年度の研究成果は、3報の論文として原稿を執筆して現在投稿準備中である。
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