研究課題/領域番号 |
20K05079
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山室 佐益 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (10402653)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共析反応 / スピネルフェライト / 鉄 / ナノ複合組織 / 磁性 |
研究実績の概要 |
交換結合型の金属/酸化物型フェライト磁石の開発を念頭に,結晶磁気異方性の大きなCoフェライト相とFe基合金相からなるナノ複合組織の形成を試みた.試料作製手法としては,FeO が純鉄相とスピネルフェライト相に分解する共析反応(共析分解)を用いた.そして,FeO 中のFe2+イオンの一部をCo2+で置換することにより,その分解過程でCoが磁性合金相とスピネル相へ適切に分配され,Coフェライトベースのナノ複合体が形成可能か調査した. 固相プロセスに関しては,Co置換量(Co/Fe比)の上限をCoフェライト(CoFe2O4)に近いCo/Fe=3/7まで変え,300~600℃で共析分解した試料をX線回折(XRD)および振動試料磁力計(VSM)により評価した.XRD測定結果から格子定数を精密に算出することより,Co置換量の増大とともに磁性合金相側へCoが優先的に分配され,仕込み組成から予想される組成に比べCoリッチなFe-Co合金相が形成されることが示唆された.また,VSM測定結果からCo置換量の増大とともに保磁力も増大し,Co/Fe=3/7の組成で約1 kOeの値を得た.この大きな保磁力の発現により,スピネル相にもCoが導入されCoフェライトが形成されていることが明らかになった.また,最終年度に予定していたCu微量添加の実験を前倒して開始し,共析分解温度の低下に効果があることを確認した. 液相プロセスに関しても固相プロセスの場合と同様に, Co添加が共析分解挙動と磁気特性に及ぼす影響について系統的に調べた.特に,Co/Fe=3/7の組成について詳しく調べた結果,固相プロセスに比べより低温で共析分解可能なことが判明した.また,Co添加により保磁力が大幅に上昇し最大約1.2 kOeという値を得たことから,Coがスピネル相に効果的に分配されていることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
固相・液相両プロセスにおいて,Co置換量および共析分解温度を系統的に変えた試料合成ならびにXRD・VSMによる構造・磁気評価については,概ね予定通り実施できた.また,最終年度に予定していたCu微量添加の実験を前倒して進めることができた.ただし,新型肺炎による影響で学内での研究活動が大幅に制限されたため,共用の分析機器を用いた実験(電子顕微鏡観察等)に遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,Coに換えてNi添加の影響について検討する.また,最終年度に予定していたCu微量添加が共析分解挙動ならびに分解後のナノ複合組織に及ぼす影響について前倒して実施する.本年度はFE-SEM等によるナノ複合組織の実空間観察を進めたい.
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