研究課題/領域番号 |
20K05083
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研究機関 | 富山県産業技術研究開発センター |
研究代表者 |
坂井 雄一 富山県産業技術研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (70416155)
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研究分担者 |
唐木 智明 富山県立大学, 工学部, 准教授 (10254236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 無鉛圧電体 / 厚膜 / スクリーン印刷 / 脱分極温度 |
研究実績の概要 |
(Bi,Na)TiO3-BaTiO3(以下、BNT-BT)系材料は脱分極温度Tdが低いことが課題であるが、厚膜化し、基板からの圧縮応力を利用することでTdが高く、電気特性も良好な厚膜形成を目指し、以下の取り組みを行った。 課題1 BNT-BT系厚膜の脱分極温度Tdの高温化についての取り組み 熱膨張係数の異なるAl2O3、YSZ、MgO基板を使用して、(1-x)BNT-xBTのなかでも室温での特性が良好なMPB組成(0.04<x<0.1)を中心にTd上昇効果について検討した。その結果、MgO基板を使用した場合にMPB組成でもTd上昇効果が確認されたが、Tdの上昇幅は約20℃とそれほど大きくなかった。その理由はMPB組成のBNT-BTは基板との熱膨張係数差が小さく、十分な圧縮応力が印加されないためであった。一方で、MPB組成から離れた正方晶側の組成では、厚膜化によるTdの上昇幅が100℃近くあったが室温付近での電気特性が高温付近よりも低いという問題があった。今後、BNT-BTのMPBから離れた組成についてTd上昇効果の検証を行うとともに、室温付近の特性改善のための検討を行い、室温から高温までMPB領域に匹敵する電気特性が維持できる厚膜形成を目指す。また、これまで、焼成時の元素飛散の影響で安定した厚膜形成ができていなかったが焼成雰囲気を検討することで作製した厚膜の電気特性が安定した。 課題2 配向手法適用による特性向上についての取り組み BaTiO3系配向膜作製で実績のある六方晶BaTiO3の厚膜への添加を検討したが、配向度は上がらず、異相も生成した。そこで、配向膜のテンプレートとなりうる板状粒子を作製し、厚膜への添加について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の予定通りMPB組成を中心にTd上昇効果について検討した。MPB組成付近でのTdの上昇効果は期待ほどではなかったが、MPB組成から離れた組成ではTd上昇効果が大きいことが確認できた。また、材料の熱膨張係数がTd上昇効果に大きな影響を与えることが確認されたことから、特性が良好かつ、熱膨張係数の小さな材料を探索するという今後の指針も明確となった。配向膜形成については、当初の目論見通りにはいかなかったが、別のテンプレート材料を使用することで配向度の上昇傾向が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
(1-x)(Bi,Na)TiO3-xBaTiO3系のMPB以外の領域では大きなTd上昇効果が見込まれる一方で室温での電気特性がそれほど良くないことから、幅広い組成についてTd上昇効果の検証を行うとともに、添加物等による室温付近の電気特性向上を目指す。また、これまで検討してきた(1-x)(Bi,Na)TiO3-xBaTiO3系よりも特性が良好かつ、Td 上昇効果が見込まれる熱膨張係数の小さな材料を探索する。具体的には、 (Bi,Na)TiO3-(Bi,K)TiO3-BaTiO3系など、複雑ではあるが良好な特性が期待できる組成系について、バルクセラミックスにて特性が良好かつ熱膨張係数の小さな材料の探索を行ったのち、厚膜化によるTd上昇効果を検証する。配向膜形成については、配向を促すテンプレート材料やその添加方法などを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は5千円以下と当初の計画を大きく外れるものではなく、今後、研究を進めるうえで必要な試薬等の購入に充てる予定である。
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