研究実績の概要 |
・最終年度の研究成果―光刺激によりリン酸塩化合物へ導入された電子欠陥の調査 大気中での高温固相反応により合成したリン酸塩化合物BaNa2MgP2O8に対し、紫外・可視・放射光(CuKα線)を照射すると、イオン中の電子が元の位置とは異なる位置に移動することを発見した。BaNa2MgP2O8に希土類金属イオンの一種であるユウロピウムイオンを賦活剤として微量添加すると、紫外光の下、3価のユウロピウムイオン由来の橙色発光を示した。研究代表者は同蛍光体に上記の紫外光・可視光・放射光を特定時間照射することで、同じ紫外励起光の下、発光色が橙から青紫に変化することを発見した。各種分光学的結果から上記の発光色変化が、紫外・可視・放射光により励起された電子をユウロピウムイオンが取り込み、価数が3価から2価へ変化したことに伴う現象であることを明らかにした。本成果は調光可能な白色光源用蛍光体や表示装置のバックライトといった日常生活で活用される光源を単一の蛍光体で実現することが出来るだけでなく、放射光検知用のセンサー材料や光メモリといった機能性材料への展開を実現する。 ・研究期間全体を通じた成果―結晶構造由来の光化学反応性の起源の解明と光反応性発光材料開発への展開 本研究は、青色蛍光体として開発されたユウロピウムイオン賦活M3MgSi2O8(M:Ba,Ca,Sr)蛍光体で実現された蛍光色制御能の詳細な調査結果を基に、蛍光色変化の起源を結晶構造の観点から明らかにし、様々な混色発光を実現する多色蛍光体の設計指針を得ることを目的とした。結晶構造解析と発光特性の比較から、結晶構造中の特定の構造単位が光化学反応に寄与すること、ならびに構成イオンを別のイオンで置き換えることで化学圧力を介した光化学反応性の制御が可能になることを明らかにした。本研究結果を基に外部刺激による発光色制御が実現できた。
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