研究実績の概要 |
(最終年度の成果)昨年度に引き続き、粘度の混合アルカリ効果の起源について33.3(1-x)Na2O・33.3xK2O・66.7SiO2(mol%)系を対象として、独自に開発した分子動力学計算コードを用いて解析した。ある非架橋酸素が別のSi原子(基質と呼ぶ)をアタックした際に形成される「5配位Si中間体」の電荷補償機構について、基質がQ3である場合の方が、Q4である場合に比べて、5配位Si中間体の周囲にKと比較してNaが存在する環境が高頻度で出現することが分かった。また、本研究で培った解析手法をケイ酸塩融液の温度勾配下での拡散現象に適用し、網目骨格の拡散が顕著に起こる温度域において、SiO2成分の移動方向が逆転することを初めて明らかにした。
(全体としての成果)5配位Si中間体の安定性が粘度の支配因子であることを、主に33.3(1-x)Na2O・33.3xK2O・66.7SiO2(mol%)系を対象として示した。5配位Si中間体生成時と反応前の系のエネルギー差ΔEと、基質SiがQ4の反応回数は相関係数0.737, Q3では0.649の正の相関となった。また、5配位Si中間体とそれを補償するアルカリの距離が大きいほど大きな活性化エネルギーが必要であることを明らかにし、33.3Na2O・66.7SiO2(mol%)と33.3K2O・66.7SiO2(mol%)組成を比べた際に、イオン半径が小さいNa系の方が5配位Si中間体が安定であり、網目骨格の反応回数(=切断回数)が多く粘度が低いことを示した。また、5配位Si中間体の最近接を取りうるアルカリ種の割合は、アルカリ種の組成比から予測される値よりもNaに偏っており、混合アルカリガラス中でNaのみの系に近い環境が反応箇所の周辺で生じやすいことが混合アルカリ効果の原因の一つであることがわかった。
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