本研究の目的は、Eu賦活蛍光体として赤色発光するCaAlSiN3:Eu(CASN:Eu)および青色発光するSr3MgSi2O8:Eu(SMS:Eu)についてX線回折のリートベルト解析を主軸とした構造解析とESR(電子スピン共鳴)法による結晶場の評価を組み合わせることで、Euイオン周りの配位構造が結晶場と発光波長に及ぼす影響を調べ戦略的な発光波長の制御を試みるものである。 2年次までに、SMS試料作製時の焼成温度が発光スペクトルに及ぼす影響についてリートベルト法による結晶構造解析を行い、特に低温焼成の場合における2相フィットや発光波長に大きく影響を及ぼす酸素位置について擬正四面体拘束条件フィットを導入することで原子の座標を高精度に取得した。この手法をCASNにも適用し構造解析を行うと同時に、電子スピン共鳴(ESR)測定を行い結晶場パラメータとEu-O結合距離との相関を確認した。さらにXPS(光電子分光測定)およびFTIR(フーリエ赤外分光)の測定も行うことで配位構造を補強するデータを取得した。新たに導入した紫外光源を用いた蛍光光度計にて発光スペクトルを取得し焼成温度や組成の違いによる変化を検討した。一方、SEM(走査型顕微鏡)観察による粒形状やサイズについても確認した。その上で、Eu-O結合の平均距離が短いほどEu2+の5d準位から電子が奪われエネルギー準位が下がる結果レッドシフトが起こるという仮説を立てた。3年次においては、低温焼成したSMSに混在するSS(Sr2SiO4)に着眼しMgを仕込み成分に含まないで低温焼成した試料について四面体拘束した解析を行った。またSMS、SS、そしてCASNにてMEM解析を行い電子密度分布の取得を行った。結果としてEuサイト周りの分布の変化が発光色に強く影響を及ぼしている事実が判明した。結果を国際シンポジウム、学会(国内・国外)にて発表する同時に、広く研究室HP上においても公開した。
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