(1)研究の具体的内容:令和3年度までにSiナノ粒子/膨潤化多孔質炭素粉体の方がSiナノ粒子/多孔質炭素小球体よりも金属ナノ粒子の担持量が多くなることが分かったことから、令和4年度には膨潤化多孔質炭素粉体系の調製法を中心にして以下のことを調べた。(i) 高分子小球体を500℃で加熱処理して膨潤化に適した炭素前駆体構造を発達させる条件決定を行い、ついで硝酸と濃硫酸の混酸浴中で処理したのち1000℃で急速加熱処理をして膨潤炭素紛を調製した。(ii)膨潤炭素について吸着量の増加を図るために賦活処理を行ったのち、有機ケイ素化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物などを吸着して急速熱分解反応で金属、半金属ナノ粒子を調製した。(iii)多孔質炭素小球体については集電極との剥離の改善を行った。(iv)調製した(ii)と(iii)の試料についてコイン型セルを作製して充放電特性を調べた。これらの結果、賦活処理によってナノ粒子の吸着量を増やすと粒子径は100 ~ 200 nmであったが、半金属としてアルミニウム担持系の場合にはクーロン効率が95%程度を示し、他の半金属系よりも比較的高い傾向にあることがわかった。また、(iii)の試料においては添加剤の種類を変更することで剥離が抑制できることが分かった。 (2)意義と重要性等:令和3年度の段階で、ナノ粒子の担持量を増やす必要性を見出したが、膨潤多孔質炭素の賦活処理によって担持量を増やすことが分かったことと、この方法であれば集電極からの剥離も抑えてコインがセルを組み立てて電池特性を評価できることが分かった。また、ホウ素はLewis酸として振舞うことからリチウムのようなLewis塩基とは酸塩基対を形成しやすく担持量が少量であっても容量の向上がみられたものと考えられる。
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