研究課題/領域番号 |
20K05096
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
久保田 正人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10370074)
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研究分担者 |
加藤 誠一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (60354362)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルミニウム酸化物 |
研究実績の概要 |
現在数多く利用されているコンピュータの主記憶メモリは、電源供給がないと記憶の保持ができない。従って、一定時間ごとに記憶を保持する動作が必要なために電力消費が大きいという問題を抱えている。この解決のために次世代不揮発メモリの研究が行われている。次世代不揮発メモリの候補として、遷移金属酸化物を用いた抵抗変化型メモリ(ReRAM;電圧の印加による電気抵抗の変化を利用したメモリ)が広く研究されている。しかし、一般的に遷移金属酸化物では、メモリ動作時に遷移金属元素の価数が変わってしまう化学反応が起こる。その結果、副生成物が生じるために遷移金属酸化物を用いたReRAMは、劣化しやすく書き換え回数に限界があると言われている。研究計画2年目となる2021年度に、不揮発メモリ機能が発現するアモルファスアルミ酸化膜の陽電子消滅測定を実施した。陽電子消滅法は、物質内に存在する酸素空孔の状態を評価できる実験手法である。陽電子は電子と衝突すると消滅しガンマ線を放出する。これを計測することにより陽電子の寿命を知ることができる。酸素空孔を持つ物質に陽電子が入射されると、電子の無い酸素空孔に捕獲されやすく寿命が延びる。不揮発メモリの性能は、成膜条件により大きく変わることを踏まえて、2020年度の研究の取り組みで明らかにした成膜方法を基に、成膜条件を変えた陽電子実験用のアモルファスアルミナ薄膜を成膜した。特に今回は、成膜をする際の加熱温度を変えた試料を準備した。得られた陽電子消滅寿命スペクトルの解析を行った結果、アモルファスアルミ酸化膜作製時の原材料の加熱温度が高いほど、平均陽電子消滅寿命値が長くなることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2020年度に見出したモデル試料の成膜条件を基に、酸素空孔の大きさを細かく変化させることもできるようになってきた。2022年度も2021年度に引き続いて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けている状況にあるが、本研究課題における対応方法も少しずつではあるが慣れてきており、当初計画通りに研究を進めることができているため、"おおむね順調に進展している"と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
不揮発メモリ機能が発現するアモルファスアルミ酸化膜に対して、局所的な酸素空孔の構造を明らかにし、局所的な酸素空孔の違いがメモリ性能に与える影響を明らかにすることを目指す。そのために今後は、不揮発メモリ性能を変えたアモルファスアルミナ薄膜を成膜し、酸素空孔の様子を比較する予定である。酸素空孔の大きさをどの程度制御するべきかを明らかにするための詳細な取り組みを進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大したことにより、所属研究機関において積極的な在宅勤務の活用等の方針が示され、その方針に従い対応したため、研究活動に制約が生じ、予定していた研究分担者等との対面方式による研究打合せが実施できなかったこと等から、当初計画に比べて、支出額が少なかったことにより、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、2022年度分研究費と合わせて、メモリ特性や酸素空孔状態等に関してより詳細な物性情報を捉えるための測定環境の整備に係る費用等に使用する。
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