研究実績の概要 |
最終年度にあたる本年度は、三元共重合体 poly(methyl methacrylate/benzyl methacrylate/2,2,2-trifluoroethyl methacry- late=45/44/6 w/w/w/)をコアとする場合に別組成であるクラッドが伝搬光に与える影響にフォーカスし、針状ドーパントの配向およびその解析方法について検討を行った。昨年度までの知見として、円柱の圧縮を構造計算により扱うにあたり、実際の光ファイバー試料の径変動が懸案となっていたため、本年度は光ファイバーのような柔軟性を持たない円柱形のバルク試料を主として、解析を進めた。 ゼロ・ゼロ複屈折性ポリマーで知られる三元共重合体は配向複屈折と光弾性複屈折を同時に相殺することで知られる。この特徴により、この組成の三元共重合体でコアを構成したポリマー光ファイバーの導波光は偏波保持特性を有することが想定され、このコア部に針状ドーパントを均一に分散させた構造を設けることにより、針状ドーパントの二色性を検出原理としたひずみ検知を行うことが可能となる。 コア母材が均一であることを前提とした構造計算結果と実験結果を対比させる上で、実験系において、クラッド母材がコアへ微小な侵食を起こして不均一構造を生じさせていることが示唆された。この発生機構を究明し、予防へ繋げるために、動的散乱法を使って侵食を評価した。クラッドとコアの分子量に意図的にギャップを持たせ、オリゴマー状態まで添加率を上げたコアから被測定試料を抽出した。また、時間別に異なる添加率の試料により、その侵食の動的な機構の解明を試みた。 その結果、界面ゲル重合法で光ファイバープリフォームを作製する段階において、あらかじめ固体化しているクラッド層が隣接する液体であるコアモノマーにより膨潤をうけ、界面クラッドのポリマー分子が固体層から遊離し、最終的にコアで発見されるということがわかった。
|