研究課題/領域番号 |
20K05105
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
青柳 隆夫 日本大学, 理工学部, 教授 (40277132)
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研究分担者 |
星 徹 日本大学, 理工学部, 准教授 (30513973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生分解性 / バイオマス / 多糖類 / 複合材料 / ポリカプロラクトン / アガロース / グルコマンナン |
研究実績の概要 |
本研究では、バイオマスなどを有効利用した新たな生分解性を有する環境低負荷材料を開発する。具体的には、海洋バイオマスであるアガロースや植物系バイオマスのグルコマンナンなどの多糖類と異構造の生分解性ポリエステルを複合化させた新生分解性材料の合成研究を遂行し、得られた材料の物性評価を行う。本年度は、バクテリアセルロースを用いた調製法を参考に、まず超臨界二酸化炭素を用いたグルコマンナンとアガロースのエアロゲルの調製を検討した。バクテリアセルロースは、食品としてはナタデココであり、比較的硬い正常である。しかし、アガロースやグルコマンナンは、繊維を生成しないので大変柔らかく、エアロゲルを合成するには、濃度を高くする必要があることがわかった。そこで、アガロース、グルコマンナンともにできるだけ高濃度の水溶液を調製し、エタノールへの溶媒置換後、超臨界二酸化炭素中で乾燥を行い、エアロゲルを調製した。いずれも、バクテリアセルロースのエアロゲルよりはやや強度が弱かった。 続いて、予備的に、カプロラクトンのグラフト重合と分散の可能性を検討した。これまでと同様に、カプロラクトンに浸漬し、オクチル酸スズを触媒として重合反応を行った。アガロースおよびグルコマンナン両方ともに分散溶媒(今回はクロロホルムを使用)に完全に均一分散することはなかった。しかし、一部を回収し精製して示差走査型熱分析および元素分析を行った結果、グルコマンナンにおいてはグラフト重合を進行していることがわかった。アガロースに関しては、現在分析中である。 以上の結果より、分散溶媒を検討することにより、材料の可能性が見出されたので、現在アガロース用いたグラフト化反応物の分析と分散操作の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バクテリアセルロースゲルの場合は通常の培養では、十分な強度が得られる。しかし、アガロースやグルコマンナンの場合はファイバー化しないので、それらをハンドリングができる程度の強度が得られるか、懸念事項であったが、濃度を上げることにより、十分なゲル強度が得られることがわかった。そのため、エアロゲルの調製も可能となり、グラフト重合を実施することが可能であった。 グルコマンナンエアロゲルを用いたグラフト重合では、分散溶媒(クロロホルム)に相溶しない部分を回収し、熱分析を行った。その結果、ポリカプロラクトンの融解ピークがブロード化し、グラフト重合反応が進行していることが示唆された。さらに、その回収部分の元素分析を行うと、炭素重量パーセントはグルコマンナンとポリカプロラクトンの中間の値を示しており、複合化していることを示していた。 分散がこれまで用いていたクロロホルムでは困難な理由は、アガロース、グルコマンナンの高い親水性によるものと予想しており、ジメチルホルムアミドあるいはヘキサフルオロイソプロパノールなどの溶媒を添加することにより分散するものと考えている。 以上の結果より、当初の計画が実現できることがわかったことから、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、本年度はアガロース、グルコマンナンともにエアロゲルの調製条件を検討し、合成に成功した。また、予備的な検討によりグラフト重合が可能であることもわかった。しかし、試料の分散が困難であり、検討が必要である。極性の大きい非プロトン性の有機溶媒を用いることにより、分散が可能と予想しており、検討する。本研究の試料は、さらに成膜やナノファイバー化、微粒子調製を検討する予定であり、そのためには完全な分散化が必須である。さらに電界紡糸法に供するためには溶媒はある程度限定されることから、使用する溶媒の種類を検討し、材料化を進めていく予定である。 次年度は、エアロゲルの大量調製と、エアロゲル化、グラフト重合を確立する、さらに、それらを分散し材料化をするための最適な溶媒の選定を行う。さらに、薄膜化、ナノファイバー化を検討する。薄膜に関しては、支持膜にエアブラシで吹き付けることにより調製する。ナノファイバー化に関しては、これまでポリカプロラクトンでの調製条件を参考に、作成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、在宅勤務となり、研究遂行に十分時間が取れずに、消耗品の購入が少なかった。さらに、成果発表や情報収集のための国内海外出張ができず旅費の支出がなかったために、残額が発生した。次年度では、サンプル合成の頻度や合成量を増加させて、また分散化の検討を目的とした実験回数も増やす。また、微粒子や薄膜、ナノファイバーなど材料化の検討するために、物品費を中心に計画的に使用する予定である。
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