バイオマスから得られる海藻由来のアガロースおよびコンニャク由来のグルコマンナンのエアロゲルを調製し、カプロラクトンの開環重合を行なった。その結果、いずれの多糖類を用いても、得られた複合材料は有機溶媒中に分散できることがわかった。最終年度では、得られた複合材料の応用展開を検討するとともに、分解性の評価を行なった。その結果、ポリカプロラクトンと混合することによりナノファイバーの調製に成功した。また、アガロースを用いた複合材料のアルカリ水溶液中での分解性試験を行なった結果、ポリカプロラクトン単独と比較して多糖類と複合化することで分解性が格段に向上することが明らかとなった。 化学改変が必要であった多糖類と脂肪族ポリエステルとの複合材料の調製において、エアロゲルの調製を経由するという新規な方法を検討してきた。その結果、化学改変なしに複合化できることがわかった。その理由として、多糖類のエアロゲルがネットワーク構造を維持でき、その表面には多数の水酸基が存在できることにより、直接重合反応が可能であったと考えられた。さらに得られた複合材料の構造を明確にするためにワルシャワ工科大学のバイオマテリアル研究室のWojciech Swiezkowski教授との共同研究を行なった。複合材料を10重量%混合したポリカプロラクトンの熱重量分析を行なったところ、ポリカプロラクトン単独に比べ、分解温度が低下することが確認できた。さらに同試料の示差走査型熱分析を行なった結果、ポリカプロラクトン単独とほぼ同一の融点を示すことが分かった。これは、複合材料がポリカプロラクトン中で分離することなく均一に分散していることを示唆している。この試料は、粘度が大変高くなることも明らかとなった。多糖類の水酸基とポリカプロラクトンのエステル基が水素結合を作り、物理架橋点を形成していると考えられらた。
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