研究課題/領域番号 |
20K05114
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
榊 和彦 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (10252066)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コールドスプレー / 複合皮膜 / アルミニウム / セラミック / CFD |
研究実績の概要 |
コーティング法コールドスプレー(CS)において、金属とそれ以外の機能をもつ2種の粉末が設定された割合で制御された組織の分散複合皮膜を作製するための手法を開発する。さらに、2種の未溶融の粒子が、高速で衝突しどのように付着して皮膜を形成するかの物理現象、異種粒子間の接合状態を明らかにする。このため2種の粉末のガンノズルへの投入方法を、ノズルの中心軸方向(A/I)と半径方向(R/I)から異なる粉末を同時に投入する方法を採用するが、この同時粉末投入による問題点も解決し、その特徴を活かしてアルミニウム粉末と硬質セラミックス粉末の混合割合を制御した軽量で耐摩耗性に優れたアルミニウム基セラミックス複合皮膜の作製を目指す。また、数値計算流体力学(CFD)を用いて超音速流れと粒子の挙動を検討して、学術的な各パラメーター間の相関を示し、実験的に検証するため、以下を行う。 (A)作動ガスの安定性の確認と対策:『ノズル内での粉末の供給が安定しない』要因分析として、現有のCS試作装置で、粉末の供給に伴う作動ガスと粉末搬送ガスの流量変動の状況を観測するため、質量流量計を設置し、流量の安定性を確認し、さらにパウダーセンサーによる粉末供給量を確認する。流量を調整して複合皮膜内の混合比が安定するかを確認して、投入角度と粉末搬送ガス流量を最適化する。 (B)CFDによる流れと粒子の解析 (C)高機能複合皮膜の作製と評価:耐摩耗性の優れた皮膜としてアルミニウム中に硬質物質の混合比を変化させた複合皮膜を作成し、皮膜組織の混合比の制御状況を確認し、摺動特性を評価する。 (D)成膜メカニズムの解明:未溶融の2種の粒子付着メカニズムについて、素過程である単粒子の観察を行う。特に、2種の粒子間の相互作用にも注目する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『(A)作動ガスの安定性の確認』として、現有のCS試作装置に供給に伴う作動ガスと粉末搬送ガスの流量変動の状況を観測するため、質量流量計を設置し、流量の安定性を確認した。測定した作動ガス流量はCFD結果とも良い相関があることがわかりかつ流量は安定していたが、粉末の供給は安定しておらず、皮膜の混合状況は制御できておらず、他の要因(粉末供給ポートの長さ・内径、粉末の流動性・帯電性など)を検討している。 一方で、Xiao-Tao Luoらが提案・報告しているマイクロフォージング援用コールドスプレーを、本A/IとR/I同時投入方式による行うことが、より有効と考えた。この検討をAl-Si合金粉末を用いて、『(B)CFDによる流れと粒子の解析)』と成膜実験で行いはじめ、まだ試行の段階であるが、その有効性が示唆されたため、結果の一部を学会発表した。
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今後の研究の推進方策 |
(A)作動ガスの不安定性の要因と考えられる、A/IとR/Iの粉末供給ポート付近の長さ・内径などの影響を確認するとともに、粉末の流動性・帯電性の状況などを新規購入するデジタル・エレクトロメータを用いて、確認を行う。平行して、制御の有無によらず、2種の粒子付着メカニズムについて検討し、その関連でもあるセラミック基材とアルミニウム粒子の接合のメカニズムについても合わせて検討を進める。 A/IとR/I同時投入方式によるマイクロフォージング援用コールドスプレーにおける、マイクロフォージング粒子径、量の最適化を行い、Al-Si合金粉末の成膜をより低圧のガス条件で行えるようにする。あわせて、CFDによる流れと粒子の解析もさらに行う。
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