研究課題
本研究の目的は,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から回収されるリサイクル炭素繊維(rCF)を自動車構造材料に再利用できる状態まで復元する表面処理技術を確立することである.rCFにおいて,回収する際に生じる性能低下が再利用する際の課題であった.そこで,樹脂残渣の浄化や表面傷の鈍化による強度復元効果が期待できる液相表面酸化(エッチング)処理技術の開発に取り組み,さらに,熱可塑性プラスチック母材CFRP(CFRTP)への再利用を想定した検討を進め,界面接着や繊維強度の観点から,処理条件と強度や界面接着力との相関の体系化や,性能復元メカニズムの解明に学術的観点から取り組んだ.2020年度は,rCFを回収する有力な処理方法である熱分解法に注目し,rCF回収時に生じる損傷要因を明確にするとともに,エッチング処理効果による強度復元に成功した.2021年度は,強度復元に関するメカニズム解明に注力した.酸化力の強い液体への浸漬では表面傷がさらに拡大し強度低下するが,マイルドな酸化条件で処理できる液体への浸漬によって鋭利な欠陥が鈍化することを明らかとした.また,強度復元したrCFのCFRTPへの再利用の検討を本格開始したほか,母材も炭素材料であるC/Cコンポジットとしての可能性があることも見出した.2022年度は,強度復元したrCFを不連続繊維強化CFRTPに利用する応用検討を進めた.強度400MPaと弾性率30GPaを等方的に達成することを数値目標に設定し,最終的に体積分率30wt%換算した場合,数値目標に迫るCFRTPが得られた.また,発展研究として,CF表面にセラミクスコートする技術開発も進め,rCF回収時に強度低下を抑制できる技術開発を行なった.多数の国内外会議報告,招待講演を行なったほか,3本の誌上報告を行った.関連特許も1件出願された.今後も成果物が創出される予定である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件) 産業財産権 (1件)
SAMPE Conference Proceedings
巻: 2023 ページ: TP23-0000000227
10.33599/nasampe/s.23.0227