研究課題
基盤研究(C)
現象論モデルによる薬剤放出シミュレーションの結果をもとに、セラソーム表面モデルを拡張し、電子状態解析を行なった。これまでの研究では最も単純な6員環格子を基本としたハニカム構造を使用していたが、現実のセラソーム表面にはさまざまな格子構造が存在している。手始めとして5, 7員環を含むモデルやさらにそれらの一部に置換機を導入したモデル構築を行なった。電子状態密度を解析することで、ギャップ中の反結合性軌道は構造の多様性を反映して縮退が解けることを明らかにした。
物性理論
DDSの薬剤キャリアに対する研究は、先行しているリポソームを中心に幅広く進められている。しかし、セラソームに限らずDDSにおける薬剤キャリアの開封方法は、現在までに、pH調整する・局所的に温度を変化させる等が提案されているが、一長一短で完璧ではなく、さらなる研究が必要である。本研究のように表面のミクロな電子状態に注目してキャリアの開封方法を開発しようという意図のもとで行われた研究は多くない。本研究によって、膜表面の電子状態を量子力学的に扱う表面科学の手法をDDS研究のツールとして使用し、ある程度の結果をだせたことは今後のDDSの発展につながるものである。