昨年度メカニカルアロイング(MA)により作製したAl-3wt%Al2O3合金粉末と純Al粉末を混合し、粗大粒と微細粒の混合組織であるバイモーダル(BM)組織からなる試料を作製した。この試料の強度延性バランスは従来の単一粒径からなるユニモーダル(UM)組織を持つ試料と同程度であったが、焼結前に40分の(合金化が起きない程度の)メカニカルミリング(MM)を施すことで、降伏強度の増大とともに均一伸びも増大することがわかった。その理由として、MMにより粗大粒領域と微細粒領域が混ざり合い、粗大粒/微細粒界面が増加したためと考えられた。これにより、変形の際に幾何学的に必要な転位が導入されることで転位密度が増大し、加工硬化率が増大することで、塑性変形が安定化されたと判断された。この結果の再現性を確認するために、昨年度MAで作製したAl-4wt%Y2O3の2種類の合金粉末(過飽和固溶体粉末(SSS粉末)と粒子分散粉末(PD粉末))のうちPD粉末と純Al粉末を混合し、BM試料を作製した。PD粉末と純Al粉末を体積比1対1で混合し、放電プラズマ焼結法で焼結した。比較のために、純Al単体、SSS粉末単体、PD粉末単体で焼結を行い、UM試料を作製した。引張試験を行った結果、BM試料の強度延性バランスはUM試料と同程度であったが、焼結前に40分のMMを施すことで、降伏強度の増大と均一のびの増大が見られた。降伏強度直後(1%塑性歪)で変形を停止し透過型電子顕微鏡観察を行った結果、粗大粒/微細粒界面近傍の粗大粒内部に転位が確認され、幾何学的に必要な転位の導入が示唆された。Al-3wt%Al2O3と同様に高強度高延性化され、本手法の再現性が確認された。均一伸びが増大した一方で、局部伸びは低下した。過去の文献に基づき、局部伸び改善には、ラメラ状の粗大粒に組織制御することが有効である可能性が示唆された。
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