研究課題/領域番号 |
20K05118
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
豊田 宏光 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (50514238)
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研究分担者 |
横川 善之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 名誉教授 (20358310)
折田 久美 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (40748597)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨セメント / 骨補填材料 / リン酸カルシウム / アルギン酸 |
研究実績の概要 |
人工骨補填材料であるリン酸カルシウムセメント(calcium phosphate cement:以下CPC)は骨伝導能や生体親和性がある生体材料である。しかし、硬化時間が長く、崩壊性があり、強度が弱い事が欠点である。この問題点を解消するために、CPC作成時に分解性高分子を配合することに着想した。アルギン酸は生体分解性の高分子で、生体適合性があるため広く臨床応用のための基礎研究に用いられている。本研究の目的は、CPCに分解性高分子であるアルギン酸を配合することで得られる生体反応について検証することである。 アルギン酸含有量の異なる4種類のCPC(0, 0.5, 1.0, 2.0g)を作成し、硬化時間、圧縮強度、表面構造を検証した。また、白色家兎の大腿骨遠位外側に直径4mmの骨孔を作成し本材料を充填する実験を行った。X線、マイクロCT、組織評価(ヘマトキシリン・エオジン染色、マッソントリクローム染色)を用いて経時的評価を行った。 結果、アルギン酸を配合することで、硬化時間の短縮、圧縮強度の増加、多孔性の獲得を得ることができた。生体内では、アルギン酸2.0gを含有した群で対象群よりも早期に生体骨に置換することを確認した。また、アルギン酸2.0gを含有した硬化液群で対象群と比較して統計学的に有意に新生骨量が増加していた(P=0.015)。 CPCは硬化後、一般的に高い密度の微細構造となるため、骨伝導能を有していても、破骨細胞等の細胞がセメント内に浸潤しにくく、周囲の生体骨に置換されにくい。CPCにアルギン酸を配合することで、充填時の緻密体から生体内で多孔化が進み、細胞浸潤に有利な環境がもたらされ、生体骨へ置換、骨再生が促進した可能性がある。本材料は骨欠損部の補填だけではなく、骨再生や再建に寄与することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではアルギン酸含有硬化液を用いたリン酸カルシウムセメントを使用した実験を行っている。In vitroでは生体吸収性、生体親和性のあるアルギン酸を硬化液に添加することでセメントがゲル状となり今までにない操作性を獲得した。アルギン酸を硬化液に添加することにより、pHの低下がおこり、それに伴い初期硬化時間の短縮、高分子量の添加、cross-linkingに伴う圧縮強度が増加する結果が得られた。SEM像ではCPCの多孔化が得られる事が確認できた。In vivoでは組織学的に白色家兎の骨欠損内の新生骨量がコントロールより有意に増加することが確認でき、アルギン酸含有CPCの生体親和性、早期骨置換作用を示す事ができた。以上内容で論文を作製し、英文雑誌に掲載されたため。
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今後の研究の推進方策 |
アルギン酸含有量を増加させるほど、機械的、生物学的に有用な結果がでた。しかし、現行の技術ではアルギン酸の高度ゲル化がおこり、CPCの硬化液として使用できなくなるためアルギン酸の添加量の限界がある。今後、アルギン酸をより多く溶解させる方法の開発や、より低粘度で分子量が多く含まれるアルギン酸を調査、獲得することでより良い結果が得られる可能性がある。
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