研究実績の概要 |
TiへのNb添加により酸化膜の緻密性と界面の連続性が向上し, 剥離強度は向上する. 更に, ある膜厚までは肥厚化に伴い, 剥離強度はTi-20 mol%Nb付近で上昇し, ピークを越えると降下することが分かった. そこでTi-20Nb合金をモデルとして, 有限要素法で数値解析と実験での耐剥離性評価を行い,界面連続性と膜厚が耐剥離性に及ぼす影響について検討した. 試料はTi-20 mol%Nb合金の板状試料を作製し, 大気炉で試料に酸化膜を形成するため1273 Kで酸化させた. 保持時間は0.9 ks, 1.8~3.6 ksとした. 被膜の相同定はX線回折装置(XRD)で行った. 密着性試験機を用いて, 酸化膜の剥離強度を測定し, 走査型電子顕微鏡(SEM)で酸化膜厚を測定した. また, Ti-20Nb合金酸化物のヤング率はナノインデンターで測定した. 酸化物/金属基板について,種々の酸化膜厚およびヤング率傾斜相としての中間相を挿入した板状CADモデルを作製し,酸化膜上面から引張り応力を負荷した際の酸化膜/金属界面の応力を計算した.数値解析はANSYSで行い, 負荷面圧は -100 N/m2とした. 界面連続性評価については基板と酸化膜界面の中間層数を変えることで評価し,また中間相を含む膜厚は一定とした. 膜厚の影響の評価については中間層を1枚とし, 膜厚を6 ~ 40 μm とした. 実験結果から, 膜厚18 μmの時, 最大剥離強度63 MPaであった. 計算結果から膜厚が増加すると, 相当応力は減少した. また, 中間層数0 ~ 1では相当応力が減少し, 2 ~ 4では増加した.膜厚と相当応力の関係は剥離強度の実験値の高膜厚側で定性的に一致した. 今後, 残留応力の影響も考慮し, 解析を行うことで定量性が向上すると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
先行研究及び本研究結果から,Ti-Nb合金と,その高温酸化で形成される酸化物の原子あたり体積はそれぞれ大きく異なり,酸化物形成時には界面に大きな残留応力が発生すると推測されるが,実際には高い密着性を持つ.本結果から,Ti-Nb合金の酸化膜の密着性向上には酸化膜の緻密化と酸化膜/合金基板の界面連続性が関与するのは明らかである.そこで,Ti合金と酸化物形成挙動と耐剥離性について,Nbと酸化物形成挙動も金属の原子半径も近いTaの添加効果についても検討する. また,金属基板への熱影響の小さい陽極酸化処理による酸化膜被覆処理を試みる.これらの酸化膜被覆Ti合金の複合材としての応用を見据え,疲労試験または引張り試験における評価を行う.
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