研究課題/領域番号 |
20K05126
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
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研究分担者 |
奥川 将行 大阪大学, 工学研究科, 助教 (70847160)
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金属溶湯脱成分 / ポーラス金属 / 粗大化 |
研究実績の概要 |
R3年度は金属溶湯脱成分におけるポーラス構造粗大化に及ぼす溶湯の物性の影響を実験およびシミュレーションを用いて調べた。リガメントサイズが同じポーラスFe合金をMg、Mg-Ni、Pb浴にそれぞれ同一温度、同一時間浸漬し、浸漬後のリガメントサイズを電子顕微鏡を用いて計測した結果、その粗大化速度はPb、Mg-Ni、Mgの順に早くなることが分かった。なお、粗大化速度の時間依存性から、粗大化機構は全て固液界面に沿った表面拡散と推察された。MDシミュレーションを用いてFe固相をそれぞれの金属浴に浸漬した際のFe固相の表面原子の拡散挙動や金属浴への溶出挙動を調べると、Pb溶中ではFe原子が固相から頻繁にPb浴に溶出する様子が確認され、一方でMg浴中ではそのような挙動は見られなかった。FeとPbは相分離の関係にあり、Pb中のFeの溶解度は無視できるほど小さいことが報告されているが、MDシミュレーションでFe原子がPb金属浴中に頻繁に溶出する挙動が見られたということは、ポーラスFe固相の表面原子はPb金属浴の影響を強く受けていると考えられる。MDシミュレーションから算出したPb浴中でのFeの表面拡散の活性化エネルギーはが3つの金属浴中で最も小さくなっており、Pb浴中ではFe原子の下地バルクとの結合が弱められていることで、Feの表面原子の下地からの束縛が弱まり、Fe原子がリガメントの表面を容易に拡散できるようになった結果、粗大化が他の金属浴に比べて早くなると推察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 金属溶湯脱成分におけるポーラス構造粗大化機構解明に向けて実験およびシミュレーションから新たな知見を蓄積しており、研究は概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度では実験においてポーラス金属の粗大化が金属浴によって異なることを確認した。今後はポーラス金属間化合物や、ポーラスハイエントロピー合金等にも研究対象を広げ、ポーラス構造の粗大化メカニズムの解明を行う。並行してシミュレーション研究にも取り組み、固液界面に沿った固相原子の表面拡散挙動を明らかにすることで粗大化を抑制する方法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度に海外研究協力者とともに実験を行う予定であったが、コロナウイルスの影響により入国が遅れたため助成金を繰り越した。2022年4月に海外研究協力者が渡航が実現しているためR4年度の前半にこの研究を実施するために使用する。
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