研究課題/領域番号 |
20K05127
|
研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
中村 和正 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (90433870)
|
研究分担者 |
高瀬 つぎ子 福島大学, 共生システム理工学類, 特任准教授 (10466641)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 構造・機能材料 / カーボン系材料 / 表面・界面物性 / 電池・エネルギー材料 |
研究実績の概要 |
資源問題、環境問題、エネルギー問題の全てを考慮し、安価で機能性の高いキャパシターの開発を目指している。そのために、ありふれたバイオマス資源であるセルロースナノファイバーのBC(ナタデココゲル)を使用し、ヨウ素蒸気による前処理や界面活性剤の混合にて、細孔制御されたCNF(カーボンナノファイバー)をOne-processで作製することを目的とした。 ヨウ素未処理とヨウ素処理に分けて、BCからCNFを作製した。その際、特に熱処理温度に着目し、それを変更した。熱処理温度に関わらず、ヨウ素処理を施したBCの炭素化収率は、ヨウ素未処理のそれと比較して約3倍もの増加が見られた。これは、ヨウ素によるBC中のセルロースの安定化によるものだと考えられる。また、熱処理温度の上昇とともに炭素化収率は減少した。これは、熱分解の継続による分解ガスの脱離とそれに伴う炭素骨格構造の成長のためであると考えられ、X線回折測定からも熱処理温度の上昇とともに結晶構造が整っていくことが分かった。各材料の電子顕微鏡観察を行ったところ、ヨウ素処理を施したBCから作製されたCNFはナノファイバーの形態が明確に見られた。吸着測定を行なったところ、熱処理温度の上昇とともに比表面積、細孔容量が減少した。この結果より、熱分解とともに細孔が潰れてしまう可能性が示唆された。ヨウ素処理を施し作製したCNFでも、熱処理温度の上昇とともに比表面積、細孔容量が減少したが、より高温で熱処理することでヨウ素未処理のCNFよりもそれらの値が大きくなった。これは、高温で潰れてしまうような細孔が、ヨウ素によるBCの安定化によりそれが維持されたためであると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、ありふれたバイオマス資源であるセルロースナノファイバーのBCを原料として、CNFが作製できた。このCNFはファイバー同士が融着したような組織が観察された。一方、BCにヨウ素処理を施した後熱処理し作製したCNFは、単味のそれと比較して炭素化収率が劇的に増加するとともに、CNF同士が融着せずにナノファイバー形態を維持していた。つまり、BCにヨウ素処理を施すことで、収率が劇的に向上した3次元網目状組織を有するCNFの作製が可能となるとの新たな知見が得られた。これらを踏まえ、熱処理温度の影響についても検討し、より高温で熱処理されたCNFはヨウ素処理を施すことで、単味のCNFよりも細孔が潰れず比表面積や細孔容量が大きくなることが分かった。これらの結果より、CNF作製時のBCへのヨウ素処理による安定化効果は絶大であり、これらを利用した材料の作製条件に対する見通しもついてきた。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により、感染拡大の予防から何度か研究活動が停止してしまったので、CNF作製に対するBCへの界面活性剤の混合の効果に関し、予備実験等が遂行できなかったため、研究がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
エネルギー問題を解決するために高性能なキャパシターの開発が急務とされ、資源問題、環境問題を解決するためにバイオマス資源の有効活用も求められている。それら2つの課題を同時に解決するために、安価なバイオマス資源からone-processにてキャパシター用のCNFの開発を進めている。昨年度に得られた結果を基に、以下の2つの研究を推進する。 1) CNFの作製法やその特性に対するBCへのヨウ素処理の効果が確認できたので、BCへの界面活性剤の混合の効果を確認し、よりキャパシターに適したCNFの作製条件を探索する。つまり、長さや立体構造そして濃度が異なる界面活性剤をBCに混合しCNFを作製するとともに、それらへのヨウ素処理の効果も併せて検討する。 2) 作製したCNFの電気化学測定を行うために、そのシステムを構築する。つまり、キャパシター容量の電極作製や電気抵抗測定の試料作製と測定方法を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の研究を通し、35460円ほど残予算が出たが、これは新型コロナウイルス感染拡大状況が読み切れなかったので、最終的な調整が間に合わなかったためである。また、令和3年度へ円滑に研究を継続するための物品を購入しなければならず、物品費が多くなってしまった。材料作製には原料や試薬の費用が必要であり、装置を維持するために部品などが必要であるので、消耗品としての物品費が必要不可欠だったためである。一方、新型コロナウイルス感染拡大による移動制限のため、学会などの中止や延期が相次いだので旅費等の支出が生じなかった。 令和3年度は、材料作製に必要な原料や試薬など、作製装置を維持するための冶具など、そして消耗品の購入のために物品費を計上し執行する予定である。新型コロナウイルスの感染状況による物流などが滞る可能性もあることから、それらを予想して若干多めに消耗品を購入する計画である。また、学会などで成果報告を行なうことを予定しているので、旅費等を計上し執行する予定である。現在、成果報告のために投稿論文執筆中であるので、その投稿費や印刷費も計上する予定である。
|