研究課題/領域番号 |
20K05133
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
赤井 光治 山口大学, 国際総合科学部, 教授 (20314825)
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研究分担者 |
岸本 堅剛 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (50234216)
小柳 剛 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90178385)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱電変換技術 / カゴ状構造半導体材料 / エネルギー散逸機構 |
研究実績の概要 |
熱電変換とは、金属や半導体材料に温度勾配をつけ、電流を生じさせることで、熱を電気に変換する技術である。厳密には、熱と電気を相互に変換することを指す。どのような材料でもこのような効果を持つが、熱と電気の結合が強い材料を熱電変換材料と言う。熱電変換技術を用い排熱を電気に変換することで、捨てられるエネルギーを利用しやすい電気エネルギーに変えられるため、高い汎用性を持つ省エネルギー技術として期待される。しかし、実際の半導体素子に大きな温度勾配をつけるには、高温の熱源と低温側の冷却機構が必要となり、排熱発電としての実用化が進んでいない。本研究では、効果的な放熱機構を材料自体に持たせることで、積極的な冷却装置を必要としない熱電材料の開発を目指している。注目している材料は、カゴ状構造を持つクラスレート半導体である。この系はカゴ構造がブロック的につながったホストネットワークを介して、高いキャリア伝導が期待されると共に、カゴに内包されたゲストイオンの非調和な振動運動により、フォノン伝導が阻害され、ガラス並みに低い熱伝導がもたらされる。本研究では、更に、キャリアとゲストイオン振動との相互作用およびイオンの非調和振動と電磁波との相互作用に注目し、キャリアの冷却機構としての可能性を検討している。 昨年度の研究では、イオンの非調和振動による電磁波放出の検討を行い、冷却機構として十分な電磁放出が得られる可能性があることを明らかにした。しかし、計算手法として調和近似に還元する切断近似を用いるなど、実現可能性を更に検討するには計算精度が高いとは言えず、今年度はより精度の高い手法を用いた検証を行った。その結果、ゲストイオン振動の非調和性をとり入れることで信頼性をあげることができたと共に、この非調和性により、更に高いエネルギー散逸効果がもたらされることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究により、本研究の中心的な機構に対する可能性が検証できた。今年度は、その結果を受け、より精度の高い手法により、本研究課題に対する検証を進めることが主要な課題であった。この点について、十分な結果を得ることができ、目標に達している。しかし、電子系とラットリング系との相互作用については、結果が得られる段階まで進められておらず、この部分については、予定の段階までは達していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、電子系とラットリング系の相互作用による電子系からラットリング系へのエネルギー散逸について検討を進める。また、全体のエネルギー散逸の効果について検討を行うと共に、熱電材料の性能の視点から、理論および実験の両面から可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス対策の影響で打ち合わせや学会などが延期もしくはオンラインとなり、予定していた旅費が未使用となったため。
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