研究課題/領域番号 |
20K05136
|
研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
阿武 宏明 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 教授 (60279106)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 未利用熱有効利用 / 熱電変換 / クラスレート / 半導体 / ハイブリッド / ナノ界面 / 密度汎関数理論 / エネルギーフィルタリング |
研究実績の概要 |
(1)クラスレート半導体の熱電物性の計算科学的手法による理解と探索 ドナー・アクセプタ同時ドーピング: クラスレート半導体におけるGa-PやCu-Pのドナー・アクセプタ同時ドーピング試料を合成し、粉末X線回折や電子プローブマイクロ分析などにより結晶相・化学組成等の結晶学的特性を調査した。さらに熱電特性のGa組成依存性を調査し、同時ドーピングにより熱電特性が改善されることを見出した。比較対象となる同時ドーピング未処理のクラスレート組成における結晶構造データに基づいて密度汎関数理論(DFT)による電子構造計算を実施し、その電子構造、熱電輸送特性を調査した。得られた同時ドーピング未処理の場合のDFT計算結果に基づいて、今後は同時ドーピングにおける電子構造や輸送特性を調査し、同時ドーピング有無を比較することで、同時ドーピングの効果を検証議論することになる。 (2)ミスフィットを導入した新規クラスレート・ハイブリッド熱電材料の創製 エネルギーフィルタリング効果とフォノンブロッキング効果を相乗的に発現する構造設計:高い出力因子が見込める材料Mを対象にクラスレート/M/クラスレートのミスフィット界面モデルに対して非平衡グリーン関数(NEGF)法を活用したDFT計算(NEGF-DFT)よる熱電係数のシミュレーションを実施した。クラスレートの種類、材料Mの種類、その組み合わせについて候補を検討し、その中から今年度はSiクラスレートとMとしてある半導体の組み合わせについてNEGF-DFT計算を実施した。その結果、Siクラスレート/M/Siクラスレートの構造とした場合に、Siクラスレートよりも熱電特性が向上する結果が得られた。このことから本研究で提案しているクラスレート/M/クラスレートのナノ界面構造をバルクのクラスレートに導入すると熱電性能が向上できる可能性があることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症への対応により研究室での活動が制限された。その影響が研究の遂行にすくなからずあったが概ね研究は進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)クラスレート半導体の熱電物性の計算科学的手法による理解と探索 (1a)ドナー・アクセプタ同時ドーピング: ドナー・アクセプタ同時ドーピング試料の粉末X線回折リートベルト解析を実施し、結晶構造の詳細を明らかにする。得られた解析データを基に結晶構造モデルを設定し密度汎関数理論(DFT)による電子構造計算を実施して構造の安定性や電子構造、輸送特性を調査する。 (1b)共鳴効果を発現する元素ドーピング: 新たな観点としてゼーベック係数向上につながるドーピング元素の検討を行う。DFT計算によって、ドーピング元素の候補を検討し、候補置換元素の中で、不純物レベルに由来する電子状態密度の増大の有無、DOS増強がある場合に化学ポテンシャル(キャリアチューニング)共鳴が可能かどうか、探索する。 (2)ミスフィットを導入した新規クラスレート・ハイブリッド熱電材料の創製 (2a) エネルギーフィルタリング効果とフォノンブロッキング効果を相乗的に発現する構造設計: クラスレート/M/クラスレートのナノ界面モデルにおいて、クラスレートの種類、Mの種類、その組み合わせを変えて、非平衡グリーン関数(NEGF)法を活用したDFT計算による熱電係数のシミュレーションを実施する。これにより高い熱電性能が発現する材料Mを同定、ミスフィット界面構造に対する依存性、材料物性に対する依存性を調査・考察し、重要な制御因子と機構を明らかにする。 (2b) ナノ物質系ハイブリッドによるミスフィット界面の導入およびそのプロセス開発、物性評価: ナノ物質系からなる界面導入およびハイブリッド化プロセス法として遊星ボールミルと放電プラズマ焼結法を活用してクラスレートハイブリッドの作製を行い、そのプロセス条件を見出す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症への対応に伴う研究活動の制限、学会参加等の出張はすべて中止、などが理由である。 R3年度においても新型コロナウイルス感染症の状況によるが、学会参加等の出張を中止とした場合、物品費やその他の項目に変更し有効に活用、あるいは次年度に有効に活用するなど、適切に対応する予定である。
|