研究課題/領域番号 |
20K05137
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高木 秀有 日本大学, 工学部, 准教授 (40409040)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クリープ / 二相合金 |
研究実績の概要 |
2021年度は,2020年度に作製した種々の二相合金に対して,クリープ試験を実施した.試験温度は623Kであり,種々の負荷応力におけるクリープデータを取得した.引張試験結果から予想されるように,二相合金のクリープ特性は,母相と強化相のそれぞれの特性の中間にある.また,応力指数で示すと,変形速度が速い場合,二相合金の応力指数は母相の値となり,変形速度が遅い場合の応力指数は強化相の値とほぼ等しくなった.このように,クリープ特性に対しも強度に関する複合則が成立している.これは,二相合金のクリープ特性は,変形速度によって,母相あるいは強化相の特性に大きく影響を受けることを意味しており,特に低応力,低変形速度の力学条件下では,これまでの知見と同様に,強化相の強靱化が重要であることを意味している.なお,現在は,試験温度が546Kの場合についても,同様な測定を実施している. 上記と並行し,母相あるいは強化相に強加工(ARB法)を施し結晶粒を微細化した組織(相)を有する二相合金を作製している.この理由は,クリープ中の組織変化(粒成長)を生じさせ,そのときの二相合金と母相および強化相とのクリープ特性に関する複合則の成立の有無を調査するためである.現時点では,微細結晶粒を有する二相合金が作製されており,力学試験実施の段階にある.クリープ試験については,上述の条件の試験が終了後に実施する.また,試験前後の組織観察が重要となるので,その実施も行う.この実験で得られる結果は,実用合金で生じる,使用中の組織変化,特に,強化相の組織変化についての知見を得るために,重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,概ね計画取りに研究を実施することができた.実施されたクリープ試験データから,クリープ挙動についても,二相合金の結果は母相と強化相の重畳で説明できることが明らかとなりつつある.但し,頻繁に生じる地震の影響などで,数日から数週間にわたって実施しているクリープ試験において,適切な変位データを取得できていない可能性がある.このため,それら試験条件の追実験を実施してる.これら制限などがあるが,クリープ試験データは,概ね計画通りに取得できている. なお,ACCB法での二相合金の作製には至っていないが,2020年度に作製した治具を用いて,試片加工に利用している.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,クリープ試験の実施を継続する.また,組織変化が生じる可能性がある二相合金の作製とそのクリープ試験を実施する.具体的には,クリープ歪み10-8~10-4 s-1辺りまでの変形速度について行う.特に,後者では,クリープ試験中の組織変化の有無,またそれが合った場合,クリープ特性としてどのような結果を得るのか,具体的には,例えば,変形速度が遅い場合は強化相の特性が現出するが,母相の組織が変化したとしても結果に影響はないが,強化相の特性が変化した場合は結果に影響する,などのデータが得られることが予想される. これらと同時に,EBSD及びTEMによる組織観察を実施する.特に,マイクな組織変化の有無について,EBSD測定によって確認する. 上記に加え,得られた結果をまとめて,論文発表する.
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