研究課題/領域番号 |
20K05139
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
新家 光雄 名城大学, 理工学部, 特任教授 (50126942)
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研究分担者 |
赤堀 俊和 名城大学, 理工学部, 准教授 (00324492)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | β型チタン合金 / 酸素 / 力学的特性 / 強度 / 延性 / ヤング率 |
研究実績の概要 |
前年度に酸素(O)を種々変化させたTi-38Nb-xO合金およびTi-42Nb-xO合金(mass%)を作製し、力学的特性を調査しところ、Ti-42Nb合金では、高酸素量にて強度および延性共に上昇する特異現象が見られたのでその再現性を確認した。その結果、この特異現象は観察されないことが確認された。しかし、Ti-42Nb-xO合金では、高酸素濃度においても、伸びが15%と良好で、強度が850 MPa以上となった。また、この合金系合金では、高酸素濃度となると降伏現象が発現することを認めた。これは、Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金(TNTZ)で高酸素濃度になると同様な現象が発現する特異現象の1つである。これも前年度取り組んだが、TNTZ合金でNbの他にZrおよびTaが含有されていることから、酸素量を高酸素濃度である0.7mass%に固定し、NbおよびZrの原子比を変化させたTi-Nb-Zr-0.7O合金を作成し、力学的特性を評価したが、低Zr含有量(3mass%)以上のZr含有量で低応力破壊を生じたため、再度Nb含有量を固定(38mass%)し、Zr含有量を3mass%から最大12mass%まで変化させた合金を作成し、力学的特性を評価した。その結果。Zr含有量が6mass%までは、強度および伸び共にほぼ同様で、良好な強度および伸びバランスを示した。すなわち、伸び約20%、引張強さ約900 MPaで、これはTi-6Al-4V合金の場合と比較して、より良好な強度および伸びのバランスである。ヤング率も65-70 GPaとTi-6Al-4V合金のそれ(約110 GPa)と比べてかなり低く低弾性率である。この合金系では、Zr含有量が高くなると降伏現象がより顕著となった。したがって、高酸素含有TNTZでの特異現象の一つである降伏現象の発現に酸素の他にZrも影響を及ぼしていることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度同様コロナ感染症が収束せずその影響が引き続き大きかった。それに加え、新たに作成した引張試験治具の不具合が生じその調整に時間を要したこと、合金インゴットの製造手法によって合金元素の不均一性が生じたと考えられたため、溶解手法の確立を余儀なくされたこと、そのことから昨年度作成した合金系につき再度確認試験を行う必要が生じたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
TNTZではNbおよびZrの他にTaも含有されていることから、本年度にて良好な強度および延性バランスを示した合金系にTa含有量を変化させた合金系の力学的特性を評価し、TNTZで認められた力学的挙動の特異現象の発現につき検討をする。以上の場合につき、光学顕微鏡(OM)観察、走査型電子顕微鏡(SEM)観察およびX線回折(XRD)を行い構成相および微細組織を調査・検討する。さらに、力学的特異現象を示した各合金引張り試験片表面つき光学顕微鏡(OM)および走査型電子顕微鏡(SEM)観察ならびに後方散乱電子回折(EBSDを行い変形挙動につき解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に続き、コロナ感染症による研究計画の遅延が生じたことに加え、合金製造の遅れが生じた。また、昨年度作成した合金の再試験をする必要が生じた。次年度において、当初計画の合金溶製のための合金元素および備品の購入を行う。コロナ感染症が収束することを予測して国際会議や国内会議への参加回数を増やす。
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