研究実績の概要 |
現在実用化が進められているバナジウムレドックスフロー電池(VRFB)では、エネルギー密度の向上には電解液中のバナジウムイオンの高濃度化が有効であるとされるが、既存のH2SO4系電解液では高濃度化(1.7 M以上)により析出物が発生するという課題がある。2020年度は1,3-プロパンジスルホン酸(PDSH)+1,3-プロパンジスルホン酸バナジル(VOC3H6(SO3H)2電解液でVイオン濃度を2.5 Mまで高濃度化することに成功した。一方でこの電解液は粘度が高いという課題が示された。2020年度は現行の電解質であるH2SO4に代えて1,3-プロパンジスルホン酸(PDSH)およびVOSO4に代えて1,3-プロパンジスルホン酸バナジル(VOC3H6(SO3H)2を用いることで電解液中のPDSVの濃度を2.5 Mまで高濃度化に成功、さらに2021年度はPDSV+H2SO4系電解液を用いて、従来の1.70 M VOSO4 + 3.00 M H2SO4電解液と比べて、約1.5倍エネルギー密度の増加を確認し、低粘度でかつ高エネルギー密度の電解液開発に成功した。 2022年度は高濃度化が可能になった原因を明らかにするために、溶液構造解析を行った。V4+については、ラマン分光測定及びUV-visスペクトル測定からは、1,3-プロパンジスルホン酸は立体障害が大きくV5+の二量体の形成を阻害することができたため、高濃度化しても安定に存在することができたと示唆される。 また、電極反応の促進を目的としてアミド硫酸を導入した電解液の検討も進めた。アミド硫酸を添加したPDSV+H2SO4系電解液において、電荷移動抵抗は従来系よりも低減した。これは電極上に窒素などのヘテロ原子が吸着され、濡れ性と活性サイトが増加し、バナジウムイオンが電極に引き付けられ、電荷移動抵抗が低下したからであると考えられる。
|