骨疾患は、患者の生活の質の低下、低余命化へとつながるため、超高齢化社会を迎えた我が国においては骨疾患への対策は急務であり、生体インプラント用金属材料の重要性および市場規模は増すばかりである。骨代替インプラントしてのTi合金は、その高い生体適合性と力学的信頼性から、臨床分野でも極めて重要な役割を担っている。 我々の研究グループは生体骨程度の低ヤング率と高弾性異方性を有する単結晶インプラントの開発を提案するとともにその試作に成功している。しかしながら、単結晶体作製にはコスト面と形状の制限の面から製造プロセスを改善する必要がある。そこで、単結晶体とまではいかなくても、金属積層造形法により熱流方位を制御することで荷重軸方位に[001]方位が向くような集合組織を形成し、低ヤング率化と上述のコストや形状の課題を克服できると着想した。さらに、本研究では合金造形体作製時に必要となる合金粉末(Pre-alloyed粉末)を利用しない画期的な手法を模索した。具体的には、合金成分の純金属粉末からなる混合粉をスタート材として用いることで、自在に造形体の合金組成を変化できると考えた。このことは、Ti合金をはじめとする合金粉末の作製にかかるコストを削減でき、今後の金属積層造形のさらなる応用につながるといえる。そこで本研究ではスタート材として成分元素の混合粉末を用いて、レーザ積層造形時に「合金化(組成)」「形状」「微細組織(結晶配向)」を同時に制御し、β-Ti合金造形体の組成・形状・結晶配向を自在に操ることを目指した。その結果、混合粉をスタート材としたレーザ積層造形体作製に成功し、さらにプロセスウィンドーによって整理することで、緻密な造形体作製条件までを見出すことに成功した。さらに造形時のパラメータ制御により、[001]方位の集合組織発現条件とそのメカニズムについても解明し、本研究の目的は概ね達成された。
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