研究実績の概要 |
R3年度は、Bi2Zr2O7(BZO)粒子の調製とキャラクタリゼーション,異種元素をドープしたBZOとBi2Ti2O7 (BTO)に関する第一原理分子動力学計算と全電子バンド計算に注力した。錯体重合法で得た前駆体を空気中750 ℃で焼成すると、少量のZrO2が含まれるが、高純度のBZO相が生成した。BZO粉体のバンドギャップは、UV-vis測定より2.38 eVと見積もられ文献値と一致した。BZOにVを添加すると主相がγ-Bi2O3へと変化し、少量のZr2V2O7やZrO2が混在した。この状況は、Vの添加量を変えた試料でも同様であった。Vを添加した試料ではバンドギャップが拡大し、γ-Bi2O3の2.8 eVと一致した。L*a*b*色度測定では、黄色度を示すb*値がBZOへのV添加によって減少した。第一原理計算は、R-doped BTO (R = Mg, Ca, Sr, Ba), (R, V)-doped BTO, R-doped BZOおよび(R, V)-doped BZOについて、一般化密度勾配法(GGA法)の枠内で実施した。TiをVで置換すると、BTOやBZOのバンドギャップ中にV 3dに起因する不純物準位が形成された。BTOでは、Rの中でもCaをVと共添加すると価電子帯頂上近傍のO 2pの状態密度がV単独添加の場合よりも大きくなった。これは、V-O間の電荷移動型吸収がCa添加によって増強されることを示唆する。同様の傾向は、(R, V)-doped BZOに関しても認められた。よって、Vを添加したBTOやBZOの発色は、Caの共添加で向上することが期待されるが、BTOやBZOに発色性を高めるためVを添加すると、これらの結晶相が減少または消失する。このため、BTOやBZOの安定性を高める異種元素の添加が不可欠である。
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