軽水炉炉内構造材料である低炭素オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L鋼)に対する長時間熱時効処理が、粒界型応力腐食割れ発生感受性を増大する予備実験結果が得られた。そこで、この材料の詳細微細組織解析を実施することにより応力腐食割れ発生機構解明を目指した。その結果、長時間時効によって転位組織変化が引き起こされること、またその変化は応力負荷時の塑性変形挙動に影響を及ぼし、結晶粒界近傍への局所ひずみ増大の原因となることが示唆された。さらに、長時間熱時効材は応力腐食割れ試験において粒界内部腐食が顕著に増加していたことから、粒界局所ひずみ集中が粒界耐食性低下の一因となっている可能性が示唆された。
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