研究課題/領域番号 |
20K05146
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
楠本 賢太 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (30764998)
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研究分担者 |
清水 一道 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (60206191)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Erosive wear / Hi-Cr white cast iron / Titanium addition / Refinement |
研究実績の概要 |
本研究では,耐熱耐摩耗材料の開発を目指して,シリアルセクショニングを援用した炭化物の形態および分布を三次元観察し,定量評価を行うことで,合金設計および評価手法の確立を目的としている.この目的を達成するために,2020年度は耐熱耐摩耗鋳造材料における晶出炭化物の制御と摩耗試験を実施した. 試料製造において,一般的な耐摩耗材料である高クロム鋳鉄を基本組成とし,共晶炭化物の大きさを制御するために,炭素(C)量を3.0~4.0%およびチタン(Ti)を0~2.0%と変化させた試料を製造した.いずれの組成においても,共晶炭化物量は約40%と同一量を示し,初晶炭化物粒径を5~30ミクロンの範囲で制御することに成功した.これにより,炭化物サイズが摩耗特性に及ぼす影響を明らかにできる。 これらの試料を使用した高温エロージョン摩耗試験において,炭化物粒径が最も小さい試料が良好な高温エロージョン摩耗特性を示した.高温エロージョン摩耗の支配因子として,炭化物面積率,炭化物の種類及び高温硬さが挙げられるが,本鋳鉄系では炭化物面積率に大きな差異はなく,TiC晶出量が0~8%と少量であることから,これらが耐摩耗性に影響を及ぼすとは考え難い.高温エロージョン摩耗特性に及ぼす炭化物粒径の影響を調査した結果,初晶炭化物粒径と耐摩耗性の相関関係が認められた.また,高温硬さと損傷速度の相関も認められないことから,初晶炭化物粒径が耐高温エロージョン摩耗性に大きく影響を及ぼしたことが明確となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.耐熱耐摩耗鋳造材料の作製 高クロム鋳鉄を基本組成とし,合金元素量を調整することにより,共晶炭化物量を約40%と同一量に制御し,初晶炭化物粒径を微細(5ミクロン)から粗大(30ミクロン)と広範囲に制御した試料作製が可能となった.これにより,一部の元素の配合を調整することで炭化物粒径の制御が容易になった.2021年度以降予定している炭化物の三次元観察に必要な試料の作製めどが立った. 2.摩耗特性評価 上記の試料を用いて,科研費で購入した試験機にてエロージョン摩耗試験を行い,耐摩耗性評価を行った.高温エロージョン摩耗の支配因子として,炭化物面積率,炭化物の種類及び高温硬さが挙げられるが,本鋳鉄系では高温硬さ,炭化物面積率および種類に大きな差異は認めらないことから,初晶炭化物粒径により整理した.その結果,高温環境下では初晶炭化物が小さいほど耐摩耗性が向上した.これにより,炭化物粒径と耐摩耗性の関係を明らかにすることができた. 上記の結果を基に,2021年度以降,X線CTを援用することで本研究の目標達成に期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の目的は,「X線CTによる炭化物形態の可視化および分布の統計処理」である.これを達成するために2種類のX線CT(マイクロCTとナノCT)を使用する.X線CTによる内部観察は主に「欠陥の発見」に用いるが,本研究では欠陥ではなく,炭化物の分布や形状を三次元的に捉え,鉄鋼材料の内部観察に着目する. X線CTは,X線発生器と検出器を固定して,試料を回転させる構成となっている.X線は水平に放射され,測定対象の試料をステージ上で回転させることで,X線の透視画像をあらゆる角度から捉えてコンピュータに蓄積し,断層像を再構成計算して三次元表示する.構成像から炭化物の大きさや分布の詳細を観察でき,統計的に処理し定量化を試みる.これまでは,金属表面を研磨もしくは,強酸で溶かして数ミクロンの奥行きしか観察できなかったが,この手法により,完全に形状を把握できる.
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次年度使用額が生じた理由 |
有効に使用するには金額が小さかったため,次年度に繰り越すこととした. 次年度の助成金額と合算することで有効に使用する.
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