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2020 年度 実施状況報告書

計算科学手法に基づくナノバブルによる超精密加工シミュレータの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K05147
研究機関東北大学

研究代表者

尾澤 伸樹  東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60437366)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードウルトラファインバブル / 精密加工 / 化学機械研磨 / 反応分子動力学法 / マルチフィジックス / 圧壊
研究実績の概要

難加工材料であるGaNやAlNは高硬度かつ高い化学的安定性を有している、従来の化学機械研磨(CMP)技術では平坦化に多大な時間とコストがかかることが問題となっている。そこで、難加工基板に対して、高い研磨速度と原子レベルの平坦性を同時に実現可能な、CMP手法の開発が強く求められている。近年、ウルトラファインバブル(UFB)を活用することでCMP速度を向上させる試みが行われている。一般的に、UFBに衝撃波を与えて圧壊させることで、OHラジカルとジェット流が生成し、それらが基板に衝突することで基板の変形及び酸化が起こると考えられている。そこで、CMPの高効率化を目指したUFBの構造を明らかにするため、反応分子動力学法を用いてN2やO2といった内包ガスがUFBがAlN(0001)のCMPプロセスに与える影響を検討した。一般的に、UFBは崩壊しにくく、CMPで活用するためには圧壊しやすいことが望ましい。そこで、異なる内包ガスがUFBの圧壊のしやすさに与える影響を明らかにするため、N2及びO2分子を内包した10 nmサイズのUFBの分子動力学計算を行った。N2分子を内包した場合はUFBの形状に変化が見られたが、気泡内外におけるH2O分子の流入及びN2分子の流出は見られなかった。一方で、O2分子を内包した場合は、気泡内にH2O分子が流入し、また一部のO2分子が流出した。ここで、衝撃波が加わると気体の流入及び流出の釣り合いが崩れ、圧壊しやすくなると考えられる。以上より、N2分子よりもO2分子を内包した方が気泡内外における気体の流出入が起こりやすく圧壊しやすいため、CMPに有効であることが示唆された。また、AlN(0001)基板上において、N2内包及びO2内包UFBに対して衝撃波を与えて圧壊させ、ジェット流によって基板が酸化させるシミュレーションに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

難加工材料における化学機械研磨(CMP)効率の向上のためには、ウルトラファインバブル(UFB)の圧壊によって生じるジェット流の「化学反応」と「衝撃、流体、拡散」のマルチフィジックス現象を理解することが必須である。しかし、これまでの機械分野における有限要素法、流体シミュレーションや粗視化分子動力学法では、化学反応を取り扱えないため対応できず、UFBにおけるマルチフィジックス現象の理解には至らなかった。そこで本課題では、これまで当研究室で開発したマルチフィジックス現象を解明可能な反応分子動力学シミュレーション手法を活用することで、電子・原子レベルからUFBの圧壊プロセスを理解し、AlN、SiCといった難加工基板において低スクラッチ・高平坦度のCMPに向けて、サイズ、密度、内包するガス種、スラリー中の酸化剤・添加剤といったUFBの導入条件を最適化可能とすることを目標としている。本年度は、内包ガスの種類によってUFBの寿命が異なることに着目し、内包ガスの種類が衝撃波による圧壊のしやすさ及びCMPに与える影響を検討した。本年度は、反応分子動力学シミュレーションに用いるReaxFF力場のパラメータを調整し、内包ガスによるUFBの安定性及び、内包ガス種がCMPに与える影響を検討可能にした。以上より、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

引き続き、ウルトラファインバブル(UFB)を活用したCMPにおいて、CMP速度の向上に寄与するUFB導入条件を最適化するためのシミュレータを開発する。CMPの高効率化を目指したウルトラファインバブル(UFB)の構造を明らかにするため、これまで、N2及びO2といったガスを内包した2種のUFBにおける安定性及びAlN(0001)基板のCMPに与える影響を検討してきた。今年度はさらに、CO2を内包したUFBについて安定性及びUFBの圧壊によって生じるジェット流による基板の酸化プロセスに与える影響を検討する。そして、これまでに検討したN2及びO2を内包したUFBの安定性及び、UFBをAlN(0001)基板上で圧壊させた時の酸化反応プロセスと比較し、内包ガス種の違いが酸化膜の生成速度及び形状に与える影響を検討する。また、CMPに用いられるスラリー中には砥粒が含まれており、UFBは基板だけではなく砥粒にも吸着し、UFBの安定性が変化すると考えられる。これまでは基板上にUFBのみを配置していたが、実際のCMP環境におけるUFBの圧壊プロセスを検討するため、砥粒としてよく用いられるCeO2ナノ粒子とUFBを同時にAlN(0001)基板上に配置し、UFBに衝撃波を加える圧壊シミュレーションを行う。そして、生じたジェット流がAlN(0001)基板の酸化プロセスに与える影響を検討し、UFBがCMP速度を向上させるメカニズムを検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Cooperative roles of chemical reactions and mechanical friction in chemical mechanical polishing of gallium nitride assisted by OH radicals: tight-binding quantum chemical molecular dynamics simulations2021

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Kawaguchi, Yang Wang, Jingxiang Xu, Yusuke Ootani, Yuji Higuchi, Nobuki Ozawa, and Momoji Kubo
    • 雑誌名

      Physical Chemistry Chemical Physics

      巻: 23 ページ: 4075-4084

    • DOI

      10.1039/D0CP05826B

  • [学会発表] 反応分子動力学法に基づくウルトラファインバブルが窒化物半導体基板の CMPプロセスに与える影響の検討2021

    • 著者名/発表者名
      尾澤伸樹,久保百司
    • 学会等名
      2021年度精密工学会春季大会
  • [学会発表] ウルトラファインバブルの圧壊による窒化物半導体基板の酸化促進プロセス :反応力場分子動力学シミュレーション2020

    • 著者名/発表者名
      尾澤伸樹,木村颯太,久保百司
    • 学会等名
      2020年度秋季大会

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公開日: 2021-12-27  

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