研究課題/領域番号 |
20K05149
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
糸井 貴臣 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (50333670)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 加工性 / 組織制御 |
研究実績の概要 |
Mg-In合金において、六方晶(HCP)構造面から心立方構造(FCC)が生成する組成範囲で試料を作製した。試料の組成はMg83In17(at.%) ~Mg68In32(at.%)とし、二酸化炭素雰囲気下での大気溶解法にて試料を作製し、酸化することなく試料を作製できた。密度は2.78~3.67g/cm3の範囲である。まずは、この様に種々の組成範囲において酸化することなく組成通りに試料を作製する手法を確立した。熱処理(673Kで50時間)後にHCP単相(Mg83In17at.%合金)、HCP相とFCC相の2相組織(Mg80In20at.%合金)およびFCC単相(Mg68In32at.%合金)組織を有する合金について組織観察を行った。X線回折測定の結果、Mg83In17at.%合金およびMg68In32at.%合金では、それぞれHCP構造およびFCC構造単相であること、そしてMg80In20at.%合金ではHCP構造とFCC構造の2相組織であることが明らかとなった。SEM観察により組織を調べたところ、HCP単相組織およびFCC単相組織では、ほぼ仕込み組成と同じであった。HCP相とFCC相の2相組織については、FCCの面積率は45%であり、HCP相およびFCC相のMg濃度はそれぞれ81%と75%であった。硬さ試験を行ったところ、HCP単相が最も高く72HVを示し、FCC相の面積率の増加とともに低下し、FCC単相では45HVを示した。それぞれの合金に室温にて圧延を行ったところ、いずれの合金においても室温で圧延が可能であったが、FCC相の面積率の増加に伴い圧延限界は高くなり、Mg80In20at.%合金(HCP相とFCC相の2相組織)では55%の圧下率まで、またFCC単相のMg68In32at.%合金(FCC単相)では90%以上の圧下率までの加工が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、Mg-In合金において種々の組成範囲で試料作製方法の確立ができた。また、組織観察における試料作製法も確立し、その解析結果もX線回折法ならびにTEM観察法の両手法により確認できている。また、室温圧延においても系統的な組成の変化とFCC相の面積率も合致しており、室温での圧延も可能であることがわかり、次年度からの4元系への合金化において、重要な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究で試料作製方法を確立した。また、目的とする加工性については、熱処理後において、FCC相の組成に依存して、変化することが明らかとなった。次年度は本年度開発した合金の多元化に挑戦する。FCC相を増加させることで、加工性を担保し、Mg中のIn濃度を低下させない事を念頭に置くと、多元化においてAl、Ga、VおよびZnが挙げられる。つまり、密度の低下を念頭に置くと、最も適切な元素はAlであることから、Mg-In-Al合金にて、優れた加工性と低密度を兼ね備えた合金を創製し、組織制御のための観察を行い、加工性を含めた機械的特性を明らかにすることを目的とする。
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