研究課題/領域番号 |
20K05150
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
多田 英司 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (40302260)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ガルバニック腐食 / 数値シミュレーション / Fe/Al対 / 電気化学計測 / 腐食モデル |
研究実績の概要 |
自動車などの内燃機関から排出されるCO2量を削減するには,燃費の向上に加え,車体の軽量化が重要である.自動車車体の場合は,使用量が多い鉄鋼材料に対して衝突安全性の担保と軽量化が実現できる高強度化が急務となっているが,その一方で一部の鋼材を比強度、耐食性、加工性に優れるAl合金や炭素繊維強化プラスチックなどに置き換えるマルチマテリアル化が重要な技術として期待されている.本研究では,マルチマテリアル化において問題となるガルバニック腐食について,精緻な腐食モデルを確立し,接合部分の耐久性評価に寄与する技術開発を目指している. ガルバニック腐食モデルの構築と評価手法の確立には,実際の測定によって大量の分極挙動データセットを準備するボトムアップ的な数値計算モデルでは対応できず,より合理的な境界条件セットの収集方法を構築すべきである.そこで,本研究では,腐食シミュレーションのためのキーとなる境界条件の整備を行う.さらに,ガルバニック腐食において現象を支配する環境因子を明確化し,それに対して時間変化する分極挙動を予測する手法を確立する.これらにより高精度な腐食シミュレーションが可能となり,ガルバニック腐食による接合部の劣化寿命予測が現実的なものとなる. 本年度では,昨年度に引き続き,NaCl中におけるFe/Al接合対のガルバニック腐食機構の解明を目的に,種々の塩化物イオン濃度に対して,ガルバニック腐食データを交流および直流電気化学測定により収集した.また,得られたデータを基に,腐食機構を検討するとともに,観測データを表すための腐食シミュレーションを実施した.その結果,Fe/Al対の腐食機構を明確化するとともに,実測したガルバニック腐食データと腐食シミュレーション結果との差異について検討し,分極曲線の経時変化を再現することの重要性を明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施を計画していたFe/Al接合部のガルバニック腐食試験と腐食シミュレーションを遂行した.また,腐食部の表面観察を腐食形態を観察し,これにより,異材接合部の腐食劣化を理解することができ,腐食モデルの構築に対する課題を明らかにすることができた.これらの成果は今後の研究指針となる.よって,概ね予定通り順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度実施したガルバニック腐食試験について,より広範な環境因子調査と分極曲線の測定を行い,ガルバニック腐食データセットと境界条件データセットを増やすことで腐食シミュレーションの高精度化に寄与する情報を収集する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19下において,予定していた情報収集や成果発表が行えなかった.これらによって経費支出が計画通りとならなかった.しかし,次年度以降における研究計画において,研究推進に必要な経費として,実験系の消耗部品の購入および成果発表をすることで,予定通り予算執行が可能であると考えている.
|