令和2年度は、ペレット状のサンプルを電気炉で加熱しながら交流電場を印加し、アルミナロッドを介してサンプルの収縮を計測する装置を開発した。フラッシュ焼結のモデル材料として多くの報告があるジルコニアでフラッシュ焼結を再現することで、開発した装置の信頼性を確認した。開発した装置を用い、LAGPのフラッシュ焼結に成功した。LAGPのフラッシュ焼結が生じる温度は、印加電場が大きくなると低下し、300V/cmの電場を印加すると280℃という極めて低い電気炉温度でフラッシュ焼結が起こることを確認した。一方で、フラッシュ焼結により作製した焼結体には数十マイクロメートル程度の粗大な気孔が形成され、印加電場を大きくすると穴の形成が促進されることが明らかになった。 令和3年度は、イオン伝導の周波数特性の計測および解析についてのノウハウを確立し、電場を印加しない電気炉の加熱のみで形成される多様な微構造とイオン伝導特性の関係を明らかにした。令和2年度の研究成果を論文化する際に浮き彫りになった課題を解決するために、令和3年度は新たな備品としてバイポーラ電源を購入し、外部電場をより精密に制御する手法を確立した。前年度の研究成果を論文にまとめ、焼結関連の学術誌に投稿し、掲載された。また、ジルコニアをモデル材料として用い、ジュール加熱の熱暴走という観点からフラッシュ焼結のメカニズムに関する検討を行い、得られた成果を解説にまとめ、学会誌に発表した。 最終年度である令和4年度は、完全に緻密化した焼結体を加圧焼結により作製し、緻密体におけるイオン伝導特性と微構造の関係を検討した。得られた成果を国内の学会で発表した。電場を印加しない常圧焼結におけるLAGPの微構造変化を詳細に検討し、焼結メカニズムに関する考察を行った。前年度までの研究と最終年度の研究のまとめを行った。
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