研究課題/領域番号 |
20K05155
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梅田 純子 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (50345162)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | チタン / 積層造形体 |
研究実績の概要 |
本研究では,既往研究において「負の材料因子」とされた酸素を多量に含むチタン積層造形体の高強度・高延性の両立を目指し,金属積層造形法の1つである選択的レーザ溶融法により作製した高濃度酸素(α-Ti相安定化元素)含有チタン積層造形体において,積層造形過程でのチタン粉末の溶融および急速冷却凝固過程で形成される特異な組織形態(針状 α/α’マルテンサイト相)と結晶配向性および酸素固溶分布に着目し,これらの特異な組織形成挙動と材料の変形機構の関係の解明を目的としている.金属積層造形体の結晶配向性(集合組織)は積層方向と入熱量に強く起因することから,本年度は積層方向の違いに着目し,力学特性に及ぼす影響を実験的に評価した.具体的には,粉末積層造形を行うチャンバー内(アルゴンガス雰囲気)にて入熱量を一定とし,積層方向をθ=0°(水平),45°,60°,75°, 90°(垂直)に調整することで異なる結晶配向性を有する純チタン積層造形体を製作した.EBSD解析の結果,θ=0°の試料では引張方向と結晶粒の成長方向が直行し,θ=90°では両方向が一致した.また,得られたチタン材の引張試験を行った結果,積層方向をθ=90°の試料はθ=0°の試料と比較して,引張強さは469.1 MPa から 636.4 MPa(36%),延性(破断伸び値)は14.7%から16.6%(17%)にそれぞれ向上した.さらに,選択的レーザ溶融法固有の結晶組織形成挙動である造形方向に沿ったエピタキシャル結晶成長と強い結晶配向性を示し,そしてそれらに起因する力学特性の異方性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り,金属積層方向の違いに着目し,異なる結晶配向性を有する純チタン積層を評価し,結晶組織形成挙動に起因する力学特性の異方性を明らかにしたことから本研究に関する進捗状況はおおむね順調に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
酸素固溶量をパラメータとして異なる結晶サイズからなるTi試料を作製し,その引張変形挙動を本年度と同様の手法で解析する.また,入熱量の適正化によってacicular形状を等軸粒化し,変形挙動を解析する.さらに,post熱処理により高濃度固溶酸素の再分配(濃淡領域の形成)を促し,低酸素濃度域での塑性変形機構と試料全体の変形挙動との関係を解析する.これらの結果に関する包括的な理解を通じて,高濃度酸素含有Ti積層造形体における高強度・高延性化に資する特異な組織形成機構の解明を試みる.
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