現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
〔課題1〕新規電析液から電析したIrOx膜について、OER耐性発現に必要な熱処理条件を温度300, 400, 500℃、時間10, 30分の範囲で検討した。300℃ではOER耐性にバラツキが見られたが、400, 500℃では良好な耐性が得られた。また、OER耐性の優劣とIrOx膜のOER電位の大きさに相関が見られ、電析IrOx膜のOER耐性の支配因子解明のヒントになる可能性がある。 〔課題2〕電析液組成に依存した定電流電析の電位とファラデー効率の変化から、電析と同じ電位で起こる酸化反応(1)と、電析電位よりも低電位で起こる酸化反応(2)の2つの副反応の存在を考えている。 炭酸緩衝液(pH 10.5)中、Ti板に電析されたIrOx上でOERが起こる電位とIrOxの電析電位の比較から、両者が同じ条件では電析の電流効率が低く、電析電位がOER電位よりも低い条件では電流効率が高い傾向が得られ、酸化反応(1)は電析IrOx上で起こるOERであり、電析の電流効率を左右することがわかった。 IrOxを電析させるTi板の電位が0.4 V未満の場合、電析は起こらずに全電流が酸化反応(2)に使われることがわかった。IrCl4濃度を変えて調製した電析液中、0.2, 0.3, 0.35, 0.4 Vで測定した電流値はIrCl4濃度が高いほど大きく、酸化反応(2)の原因物質がIrCl4から生じていることがわかった。 〔課題3〕新規電析方法を用いたIrOx/多孔チタンの作製とOER特性の評価を開始した。電流密度が小さい領域では多孔IrOx 電極のOER電位はIrOx平板電極より低くなったが、0.12 A/cm2付近で逆転した。この理由として、OERで発生した気泡による実効的な電極表面積の減少が考えられ、電解液撹拌や電極配向の変化によって電流減少を抑制できる可能性が得られた。
|